来年のつみたてNISAをどうしよう
2018年もわずかになり、2019年を迎えるにあたって来年のつみたてNISA(あるいはNISA)の対象商品を考えている方も多いと思います。私も何が良いかな、と思ってつみたてNISAの対象商品をSBI証券のリストから選んでいました。
以前記事で検証した印象ではつみたてNISAは投資期間が長く、期待される税金控除額はNISAよりは多いようです。20年なので通常はそれなりのリターンが得られるはずですが、日本のバブル崩壊のような事例もあるため投資先はある程度分散されたものを選びたいな、と思っていました。
安定性を重視するのであればよく分散された全世界インデックスや先進国インデックスをベンチマークにしたファンドを選ぶのが安心できそうです。最近のファンドは信託報酬もかなり安く0.3%未満のものもかなり多いです。
ただし、信託報酬だけでコストを計算すると落とし穴にハマりそうだったので調査をしてみました。
ベンチマークに劣後する投資信託
投資信託を購入するときにちゃんとレポートとか目論見書とかを読んでいますか?商品の内容を理解することは基本中の基本なので公開されている情報はなるべく目を通したほうが良いと思います。
購入の参考にしようとレポートを読んでいると、多くのファンドはベンチマークのリターンからズレが生じていることがわかりました。例えば、「楽天-楽天・全米株式インデックス・ファンド (愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)) 」を見てみると、1年間のベンチマークのリターン6.9%に対してファンドのリターンが6.4%です。信託報酬が約0.17%ですが残りの0.33%の劣後(※)は一体何でしょうか?商品がVanguardのVTIに準じて値動きをするので理解しやすい商品ですが不可解なコストが発生しています。原資産の売買などに伴うコストにせよ何にせよ、ベンチマークから大きく乖離する可能性が高い商品を20年間保有するのは少し気が引けます。
※ 多くのファンドの目論見書では基準価格は信託報酬を控除後の価格になっていること、リターンを基準価格ベースで計算しているという事から劣後幅を考えています
また、「三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 」も信託報酬が約0.12%と非常に安い信託報酬が魅力的な商品です。こちらは1年間のベンチマークのリターンが0.3%に対してファンドのリターンは2.4%です。信託報酬で失われた0.12%を考えるとベンチマークに対して+2.2%のリターンを生み出しています。「プラスだからいいじゃん!」と考える人もいるでしょうが、毎年謎のプラスリターンが生み出せるとは限りません。ベンチマークに忠実でないファンドは20年間ブレつづけて、結局ベンチマークに劣後し続ける可能性もあると思います。Vanguard社のETFなどはベンチマークとなるインデックスにほぼ一致するような成績を上げているので安心なんですが、あまりにもベンチマークから離れた成績をあげるファンドには「ちゃんと運用できているのか?」「開示しているベンチマーク自体は正確なのか?」などの疑問がわきます。
調べたところ「ニッセイ外国株式インデックスファンド」ではベンチマークのリターンとファンドリターンが一致していましたが、それがたまたま今年だけそうだったのか、今後ずれるのかはわかりません。(ニッセイは設定来の5年で1.2%なのでかなり忠実だとは思いますが。)
つみたてNISAの商品はベンチマークにどれくらい忠実なのか?
来年のつみたてNISAの投資対象は当初特に深く考えずに楽天バンガードの全世界株にしようかと思っていたのですが、先程の調査のこともあり、つみたてNISAの対象となる投資信託のリターン、ベンチマークのリターン、2つのずれ、信託報酬などに注目してデータを集めてみました。ファンド規模が小さい(10億以下)ものや信託報酬が0.54%以上のものは投資対象にあまり選びたくなかったため取得していません。データは各ファンドが出しているレポートからとっています。以下のCSVをベースに集計してみました。
ファンドのリターンは信託報酬が差し引かれた状態で表示されていると考え、トラッキングエラーは(1年間のファンドリターン + 信託報酬)-(1年間のベンチマークリターン) として計算してみました。トラッキングエラーは-2%〜2%にも渡っており、ベンチマークよりも良いリターンを出すファンドも多く、ベンチマークの設定とそれに対するファンド運営の方針が正しいのかやや疑問にも思います。
ところで、ファンドが開示するリスクとリターンをプロットしてみるとアセットクラス毎にクラスターを形成しており、まあそもそも大きくずれて目立つファンドは無いようなのは安心でした。
バランスファンドはファンドにより設定が様々なのでリスク・リターンも様々です、やはり分散してあるもののほうが明らかにリスクが低いですね。
先程の式で求めたトラッキングエラーをプロットすると以下のようになりました。縦軸がベンチマークからのズレを示していますが、上の方のプロットはファンドのリターンがベンチマークより良かったものです。ベンチマークよりも+2%程度のリターンを出している青色のJapan Stockと書いてあるプロットやEmerging Stock, Global Stockもリターン、エラーともに似たような位置にあることから、証券会社が示しているベンチマークリターン自体が本当に正しいのか?という疑問が湧いてきます。配当再投資?なんなんでしょう?
表示されたベンチマークとの差が-0.5〜0.5%/年のものもかなり多く、これらはベンチマークにほぼ忠実と思われます。
ごちゃごちゃしてしまいますが、それぞれのプロットが何の投資信託を表しているのかもプロットしてみました。
何を選ぶか?
20年という長期スパンの予測を正確にするのは難しいと思います。いちばん重要なのはリターンがちゃんと期待できるものにすることだし、それがうまく狙った程度得られれば良いと思います。
今回、ベンチマークよりも良いリターンをだしている商品がたくさんありましたが、これらがなぜベンチマークからこれだけずれるのかは証券会社の方はしっかりと明示して欲しいものです。ある程度ルールに沿って運用されている商品がベンチマークからこれだけずれるとなると、少し信頼度が落ちます。
私はNISA以外のものとのバランスを見ながら信託報酬がなるべく安く、ベンチマークから不自然に乖離しないものを選ぼうと思います。とはいえ、ベンチマークからの乖離もファンドの特性毎に似たような傾向が見られたことからあまり深刻に考える必要はないのかもしれません。購入時は商品設計の確認は必ず行うようにしたいものです。
一応今回のトラッキングエラーの絶対値が少ないものから、ファンド名、信託報酬、トラッキングエラーなどを示したテーブルを示すので参考にどうぞ。
ファンド | 分類 | 地域 |
ファンド |
ベンチマーク リターン |
信託報酬 | TrackingError | |
1 | ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド | 国内株式 | 日本 | -5.1 | -4.9 | 0.17 | -0.03 |
2 | 三井住友TAM-SMT JPX日経インデックス400・オープン | 国内株式 | 日本 | -5.44 | -5.07 | 0.4 | 0.03 |
3 | 三井住友-三井住友・DC年金バランス30(債券重点型) (愛称:マイパッケージ) | バランス | グローバル | -0.7 | -0.5 | 0.24 | 0.04 |
4 | 三井住友-三井住友・DCターゲットイヤーファンド2045(4資産タイプ) | バランス | グローバル | -1.4 | -0.9 | 0.45 | -0.05 |
5 | 三井住友-三井住友・DC年金バランス50(標準型) (愛称:マイパッケージ) | バランス | グローバル | -0.7 | -0.5 | 0.25 | 0.05 |
6 | 三井住友-三井住友・DC年金バランス70(株式重点型) (愛称:マイパッケージ) | バランス | グローバル | -0.7 | -0.5 | 0.26 | 0.06 |
7 | ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド | 国内株式 | 日本 | 0.2 | 0.3 | 0.17 | 0.07 |
8 | 三井住友-三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド | 国内株式 | 日本 | -5 | -4.9 | 0.17 | 0.07 |
9 | ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 国際株式 | グローバル | 2.3 | 2.3 | 0.12 | 0.12 |
10 | 野村-野村インデックスファンド・内外7資産バランス・為替ヘッジ型 (愛称:Funds-i内外7資産バランス・為替ヘッジ型) | バランス | グローバル | 0 | 0.4 | 0.54 | 0.14 |
11 | SSGA-米国株式インデックス・ファンド | 国際株式 | 北米 | 6.94 | 7.64 | 0.49 | -0.21 |
12 | ニッセイ-DCニッセイワールドセレクトファンド(標準型) | バランス | グローバル | -1.3 | -1.3 | 0.22 | 0.22 |
13 | One-たわらノーロード 先進国株式<為替ヘッジあり> | 国際株式 | グローバル | 0.78 | 1.23 | 0.22 | -0.23 |
14 | ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型 | バランス | グローバル | -1.1 | -0.7 | 0.17 | -0.23 |
15 | 野村-野村6資産均等バランス | バランス | グローバル | 1.9 | 1.9 | 0.24 | 0.24 |
16 | 三井住友-外国株式指数ファンド | 国際株式 | グローバル | 2 | 2.8 | 0.54 | -0.26 |
17 | 楽天-楽天・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)) | 国際株式 | グローバル | -0.3 | 0.2 | 0.23 | -0.27 |
18 | One-たわらノーロード 先進国株式 | 国際株式 | グローバル | 2.31 | 2.83 | 0.22 | -0.3 |
19 | 楽天-楽天・全米株式インデックス・ファンド (愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)) | 国際株式 | 北米 | 6.4 | 6.9 | 0.17 | -0.33 |
20 | 三井住友-三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド | 国際株式 | グローバル | 0.7 | 1.3 | 0.27 | -0.33 |
21 | 野村-野村つみたて外国株投信 | 国際株式 | グローバル | 0.7 | 1.3 | 0.21 | -0.39 |
22 | SBI-EXE-iグローバル中小型株式ファンド | 国際株式 | グローバル | -3.56 | -2.8 | 0.33 | -0.43 |
23 | 三菱UFJ国際-eMAXIS 最適化バランス(マイフォワード) | バランス | グローバル | -1.1 | -1 | 0.54 | 0.44 |
24 | 三菱UFJ国際-eMAXIS 最適化バランス(マイストライカー) | バランス | グローバル | -3.9 | -3.8 | 0.54 | 0.44 |
25 | りそなAM-つみたてバランスファンド | バランス | グローバル | -0.5 | 0.2 | 0.23 | -0.47 |
26 | ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイJPX日経400インデックスファンド | 国内株式 | 日本 | -5.8 | -5.1 | 0.21 | -0.49 |
27 | 三菱UFJ国際-eMAXIS 最適化バランス(マイミッドフィルダー) | バランス | グローバル | -0.9 | -0.9 | 0.54 | 0.54 |
28 | 三菱UFJ国際-eMAXISバランス(8資産均等型) | バランス | グローバル | -0.6 | -0.7 | 0.54 | 0.64 |
29 | 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) | バランス | グローバル | -0.2 | -0.7 | 0.17 | 0.67 |
30 | One-たわらノーロード 新興国株式 | 国際株式 | エマージング | -10.04 | -8.95 | 0.37 | -0.72 |
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