金利を織り込んでもレバレッジドオールウェザーは強いのか?

Finance

金利とレバレッジを弄る最後のシリーズになると思います。高金利環境でとんでもないドローダウンを見せたLPFでしたが、下落に強いポートフォリオと言われる、株式、債券、コモディティ・金を組み合わせたオールウェザーポートフォリオにレバレッジを掛けた、レバレッジドオールウェザーポートフォリオ(以下LAWPF)も金利に負けてしまうのでしょうか?

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レバレッジドオールウェザーポートフォリオ

レバレッジドオールウェザーポートフォリオも初出はレバレッジ教祖であるROKOHOUSEさんだったでしょうか。

アンソニー・ロビンズの著書の中で、著名なファンドマネージャーであるレイ・ダリオが提唱したというポートフォリオにレバレッジをかけて運用してみよう、というコンセプトのポートフォリオです。以前のバックテストでもレバレッジをかけることで超過リターンを生む一方でドローダウンが限りなく低いポートフォリオとして注目したことがありました。

ポートフォリオとしては以下のような構成になります。

レバレッジ株式25%
レバレッジ債券20%
中期債25%
コモディティ15%
15%

ここで、コモディティと金のデータを取得する必要が出てきました。ただ、Quandlのサイトを利用するとコモディティ(FRED/PPIACO)は1900年代ごろから取得できますし、金(LBMA/GOLD)は1968年以降は詳細なデータが取得できます。それ以前はほぼインフレと一緒にわずかに動くのみなので、Webサイトからダウンロードした年ごとの金価格から大まかなシミュレーションをすることで十分と考えます。

超長期のレバレッジドオールウェザーポートフォリオ

レバレッジファンドをシミュレーションしたデータを使って今回もポートフォリオのシミュレーションをしてみます。

さて、材料が揃ったのでPythonを使ってポートフォリオのシミュレーションをしてみました。今回は超長期のチャートのみ示します。また、レバレッジポートフォリオをリスク毎に描画するとごちゃごちゃするのでリスク大の1つのみ描画しました。

S&P500LPF HighAll WeatherLeveraged All Weather
年率幾何リターン10.911.87.810.0
年率標準偏差14.421.26.714.0
最大ドローダウン51.164.911.634.3
シャープレシオ(Rf=0)0.7570.5591.1610.713

受け取り方は人によりけりだと思います。LAWPFは全体の資産に対して2倍のレバレッジがかかっていますが、最終的なリターンとしてはS&P500には劣っています。株式は75%/200%分のみで、その他は債券のようにリターンが低めの資産、金やコモディティのようにそれ自体がリターンを生むものでないものに投資しているためか、上昇分はほぼ金利支払いに消えている、という印象でしょうか。

一方でドローダウンについては、限定的です。債券にそれなりに投資しているのにLPFと違い致命的なダメージを受けることはなく1970年代を過ごしています。もちろんリターンは悪いのですが、LAWPFでは下がってもせいぜい株式と同程度です。

リターンはS&P500を上回っていますし、リスクはS&P500より低いため、このような分散がポートフォリオの効率性を上げるのは長期に渡って真なのでしょう。ドローダウンもレバレッジがかかっている割には34%で済んでいます。シャープレシオやソルティノレシオこそ株債券のみのポートフォリオには負けていますが、まずまずの成績でしょうか。

どう攻める?

もっとも今回の比較でもっともリターンが良かったのはリスク大のLPFでした。こんな考え方もできると思います。市況が悪い時期はLAWPFなどでリスクを控えめにしつつも株式のリターンを狙う。上昇の余力が出てきた時に思い切ってLAWPFを切り崩してリターンを狙ってリスクを取る。

市場の流れは読めない、とは言いますが、ここまでポートフォリオ理論を考えたりしている方々は市場の流れを読む努力もしているはず。狙ったとおりにうまくは行かないでしょうが、こんな風に勝負してみるのも面白いかもしれませんね。

コメント

  1. 米国株ルーキー より:

    こんばんは。今回も内容の濃い記事、大変参考になりました

    レバレッジドオールウェザーの時代ごとのリターンやシャープレシオはどんな値になったのか教えていただけないでしょうか?
    特に1965-85年で、どの程度の値を得られたのかが気になります。

    あと、今回のテストは金、コモディティの手数料やリバランスの購入手数料は考慮されていないのでしょうか?それらを考慮するともう少しリターンが下がるのでしょうか。

    金、コモディティはどちらもリターンを生まないので基本的に採用しづらいですが
    金の役割=有事のヘッジであれば、例えば円(雀の涙ほどの利息ですが)
    コモディティの役割=インフレヘッジであれば、TIPS
    などリターンを生むアセットへ置き換えができないかなと思っております。
    たぶん、株価下落を十分ヘッジするためには円とTIPSの割合を相当高くしないといけないことになって、機能しないかもしれませんが・・・

    また、そもそもの金、コモディティの役割が間違っているかもしれません(笑
    いまいち理解しきれていないので・・・

    • drkernel drkernel より:

      時代ごとの値もいつかは記事にまとめた方が良いかもしれませんね。少々おまち下さい。
      記事では手数料などは含めていないので、取引する金融機関によって利益が押し下げられます。
      円やTIPSに置き換えるのは効果あるかもしれませんね。
      ただ、今のドル高に対して金と円は数十年前と同じようには機能していないのと同じように、
      今、有事になった時や、インフレ率が上がった時に何に投資するかはその視点で再考するのも良いかもしれません。
      円よりスイスフランの方が良いかもしれませんし。
      TIPSは過去データが無いのでなんとも言えませんが、個人的にはインフレ率が上がってから投資しても遅く無いのではと思います。
      少なくとも今はインフレが加熱しているわけでは無いので実質金利の上昇の影響の方が大きくなるかもしれませんね。

  2. ロイ より:

    こんにちは。要望ですがTQQQ(3倍)を使ったポートフォリオとQLD(2倍)を使ったらどのようなシュミュレーション結果になるのかみてみたいです。SPXLは減価の影響がこれらより大きいと考えていて、レバレッジポートフォリオはもっと良くなるのでは?と考えています。

    • drkernel drkernel より:

      ロイさん、コメントありがとうございます。
      当サイトのシミュレーションでは推定式からレバレッジETFの値動きを回帰あるいはベイズ推定していますが、
      この推定のためには配当利回りのデータが必要になります。残念ながらNASDAQ comoposite indexやNASDAQ 100の配当利回りが公開されていないため、過去のシミュレーションは困難となっています。
      もし存在するデータで自分で実際に検討してみたいというのであれば、「Portfolio Visualizer」というサイトでやってみると良いかと思います。

      “減価”をどのような意図でおっしゃっているのかはわかりませんが、少し前の記事で、レバレッジETFの年率リターンとインデックスETFの年率リターンを3倍にした数値を比較したことがあります。
      https://drkernel.net/archives/513
      ここではインデックスのボラティリティが高いほどこの2つのリターンの差は大きくなっていました。
      多くの人が”減価”をこのような意味で使っているかと思いますが、こうした点からは、QQQのほうがIVVよりも年率1-2%程度ボラティリティが高いので長い目で見ると”減価”はしやすいと思います。
      ただし、レバレッジETFの年率リターンがインデックスETFの年率リターンの3倍を超えるケースも考えられます。
      そこまで含めての予測についてはご自身が投資先としてどう考えるか、という点から考えていただくのが良いのではないでしょうか。