クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学(ミハイ・チクセントミハイ)

Book

「友達と夢中でゲームをしていたら帰宅が遅くなって親に叱られた」
「面白いマンガを読んでいたら気づけば朝日が昇り始めた」

好きなことをしていると時間を忘れるというが、集中している時は目の前のことに完全に意識が向いて、時間も忘れてひたすら打ち込むことはないだろか?この状態が本書の著者であるミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー体験」だ。

上ではゲームや漫画など、身近な例をあげたが、ミハイ・チクセントミハイは本書を書き上げる中で、ノーベル賞級の超一流の人たちに数多くのインタビューを行い、一流の人間が一つの分野を極めるときの共通項を見出した。

 

スポンサーリンク

一流の処方箋

本書は邦訳こそ2016年だが、もともとは1990年代に出版された本だ。「フロー体験」という言葉は心理学分野の本ではよく取り上げられており、以前レビューした「GRIT やりぬく力」でもフロー体験というワードが取り上げられている。物事に打ち込んで飛び抜けた才能を発揮する人は、一つの物事に一心不乱に打ち込むもののようだ。

本書のタイトルがクリエイティビティというのは、ある分野で突出した人こそが分野の境界を広げるような仕事を成し遂げるからこそこのタイトルがついたように思う。ノーベル賞を2度受賞したライナス・ポーリングなどはまさしく本書で取り上げられるような一流の人物で、度々発言がとりあげられた。

本書では多くの人々のインタビューが取り上げられているが、共通しているのは、フロー体験を知る人は皆、自分が取り組んでいる仕事に愛着を強く持っていて、それ自体を楽しんでいる人が多い。

”たとえ報酬が与えられなくても、その活動をする事自体のためにそれを継続する”
“彼らは、極めて困難な仕事に取り組んでいる際の非常に集中した没頭した状態を陽気な遊び、歓喜に満ちた、愉快な冒険として経験していたのである”

与えられた仕事をこなすようなものではなく、自分のために仕事を作っているようだ。なのでここで取り上げられるクリエイティブな仕事はアカデミックの分野や、アートのような分野が多いように思う。被雇用者(employee)のような立場では、つまり与えられた仕事のみを管理下で行う人には、そこまでの成果を出すことは難しいような印象を受ける。

 

フロー体験

フロー体験とは、以下のような状態を指している。

1.何をすべきか、どうやってすべきか理解している
2.日頃の現実から離れたような、忘我を感じている
3.ただちにフィードバックが得られる
4.活動が易しすぎず、難しすぎないような、能力の水準と難易度とのバランスが適度にとれている
5.その場を支配している感覚。自分が有能である感覚を持っている
6.活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。
7.自分はもっと大きな何かの一部であると感じる

自身の活動に価値を感じてそれに没頭することができればフロー体験に似たような経験を積むことができるかもしれない。

 

普通の人間がフロー体験を経験できるのか?

あまりにも一流の人物ばかりが取り上げられる本書では、一般人にはそこまでの集中を産むことは難しいような印象を抱かせられるようにも思う。特に物理や数学のようなアカデミアでの成功は若い時の成果が非常に重要になる。

一方で、心理学や哲学のような分野では長年考えに考え抜いた人のほうが深いアイデアに到達しやすい、ともある。分野は選ぶが人間はある程度の年齢からでも成長することは可能なのだろう。

チクセントミハイは読者向けにいくつかのクリエイティビティを育むアドバイスを与えてくれている。

毎日何かに驚くように心がける
毎日、少なくとも1人の人を驚かせるように心がける
毎日、何があなたを驚かせ、あなたがどのように人を驚かせたのかを書き留めておく
何かが興味の花火を放ったら、それに従ってみる

好奇心の楽しみ方をしっかり学び、新たな経験と新たな知識の追求を自律的なものにする方法
行うことが楽しみとなる具体的な目標持って、朝起きる
うまくできた事は楽しくなる
何かを楽しみ続けるためには、複雑さを増大させなければならない

また、何かを追求するということは、一方で他のことを追求しない、ということでもある。だから集中できる環境を作り出すためになるべく忙しくしないことや、日々のどうでも良い活動をルーティン化してエネルギーを温存すべし、と提案している。

 

最後に

世の中には「一流の人は〜」のような本が溢れているが、個人の体験を綴った本を一冊読むくらいであれば、こうしたテーマの金字塔である本書を手にとって見るのも良いと思う。必ずしも自分がやりたい分野についての答えが書いてあるわけではないが、数十人もの一流の人々のインタビューを読むことで意識の改革ができるのではないかと思う。

かくいう自分もアラサーになってまだまだ色々なことに興味のベクトルが向きすぎてフロー体験とは真逆のマルチタスク人間のような生活をすることが多くなってしまった。拡散した後は収束しなければならないように思う。本書からはそんな事を言われたように感じた。

コメント