株式市場に見られる美しい対称性

Finance

前回記事にした「美しい対称性」で何かいい例ないかな、と思い現実世界にみる株式市場の対称性(=ランダムウォーク)を可視化してみました。

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日々の株価の変動率

当たり前の事だと思いますが、1つ10ドルで100個買ったものが1つ20ドルになった時と、1つ1000ドルで1個買ったものが1つ2000ドルになることの意味合いはあまり変わりません。どちらも合計が1000ドルから2000ドルに変化するからです。意味合いが深いのは絶対値の増減(10→20では10、1000→2000では1000)よりは、相対的な増減です(10→20も1000→2000も+100%)。

株式市場にランダムウォーク仮説というものがあります。株式市場の価格変動はランダムに動くので予測不可能、という理論です。実際に株式のインデックスをぼーっと眺めているとある日は+0.5%になり、ある日は-0.5%になり、、、とふわふわと変動していきます。

例えば、ある10日間の価格変動がこんな感じだったとします。

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
変動率(%)
2.5
4.5
2.6
4.7
1.9
-4.2
4.2
4.2
-1.6
-4.8

原価が100ドルの株がこのような変動をした場合、10日後には114.24ドルになります。これは

100 × (1+0.025) × (1+0.045) ×・・・=114.24

で求められます。

別のある10日間の価格変動がこんな感じとします。

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
変動率(%)
-4.8
-4.2
-1.6
1.9
2.5
2.6
4.2
4.2
4.5
4.7

実はこれ、上の数を昇順に並べ替えただけです。この場合も10日後には114.24ドルになります。

実数は掛け算に交換法則があるので順番を入れ替えても結局変わらないのは直感的にわかると思います。2つのチャートを並べるとこんな感じ。形は違うけれど行き着く先は変わりません。

f:id:drkernel:20180113150520j:plain
f:id:drkernel:20180113150523j:plain

 

これってつまり、10年間分の日々の変動率を表す数字のセットがあれば、変動率がどう並んでいようが、ある株を100ドルで買った時に10年後にいくらになるかは計算できるわけです。

実際にアメリカの代表的な株式インデックスであるS&P500の日々の変動率を見てみます。

S&P500の日々変動

S&P500のインデックスをRで取得して見てみるとこんなチャートになります。暴落を繰り返しながらも右肩上がりにで現在の価格に至っています。

f:id:drkernel:20180113150532j:plain

日々の変動率を計算してみたものをQ-Qプロットに並べてみるとこんな形になります。

f:id:drkernel:20180113150528j:plain

縦軸が日々の変動率、これが左から1つずつ順番に並びます。一番左の-0.20(-20%)はブラックマンデーで暴落した日ですね。多くのプロットは-0.05から+0.05くらいに並んでいます。右端は一日で一気に価格が上昇した日、1日で+10%にもなった日があるようです。

パーセンタイルで見てみると、

1%
2.5%
5%
25%
50%
75%
95%
97.5%
99%
変動率(%)
-2.56
-1.85
-1.43
-0.40
0.04
0.50
1.44
1.89
2.54

こんな感じ。1パーセンタイル(下位1%)でも-2.56%、99パーセンタイル(上位1%)で+2.5%です。極端な変動、いわゆる暴騰や暴落は稀にしか起こらない減少、統計学的にいうと外れ値みたいなもののようです。この外れ値(+-3sdとしてみました)を除いてみます。すると、Q-Qプロットはこんな形。QQプロットが直線的になるのは数値がほぼ正規分布をしていることを表します。

f:id:drkernel:20180113150517j:plain

ヒストグラムで(外れ値を除いた)日々の変動の分布を見てみるとこんな感じ。きれいな分布です。ほぼ中央値が0%で左右対称。

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これってつまり、ある日買った株が翌日に上がるか下がるかっていうのは確率論からは世の中の経済をよっぽど達観している人じゃなければ分からないってことです。まさにランダムウォーク

年代別の分析

年代を変えてみても実はこのヒストグラムの形はほとんど変わりません。

左から、直近20年、1980-2000年、1960-1980年。

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美しい対称性じゃありませんか?数学世界で見られるような美しい対称性はなかなか現実世界では見られません。でも、マスデータを集めた統計処理をすると時に美しい対称性が見られることがあります。

実はちょっと右寄りな株式市場

株式市場が次にどう動くのかは正直あまり分かりません。ただ、微妙にこのプロットは右寄りにずれている、つまりアメリカの株価はどちらかというと増加しがちということです(中央値で0.04%、平均値で0.001%)。明日はどうなるかはあまりわからない。でもそれが数万回繰り返されると徐々にプラスの方向に向かいます。それだったら使わないお金は現金にするよりも株式市場に入れておいたほうが10年、20年の長いスパンではきっと富をもたらしてくれるはずです。

なんか投資ブログみたいになってしまいました。

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