規制緩和にMMTは何を語るのか?

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2020年1月に明らかになったCOVID-19も、中国を発端にした感染の流行が明らかになってから2ヶ月が経ちました。死亡者は1万人を超え、社会に大きな影響を及ぼすほどになっています。また、中東、ロシア、米国のシェール企業に大きな影響を及ぼすほどの原油価格の暴落もおこっています。各国政府は感染を抑えるために実質的に経済活動を抑制するような方針を取り始め、株価は30%を超える暴落に見舞われるようになりました。

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根拠のない予想は危ない

コロナウイルスの今後の感染の拡大や死者の増加については予想を示すのは控えます。専門でない人間の意見はより不確かであり、聞く人によっては不要な不安を煽られるでしょう。今大切なのは、よりサイエンスに基づいた意見であり、また、専門的に書かれていた場合にはわかりやすく正確に伝えてくれるメディアだと思います。twitterではCOVID-19について気になる論文などがあれば紹介するようにはしていますが、それもせいぜいごく一部しか紹介しきれません。科学的根拠の無い意見を判別するのは一般の方には困難な事もあるため、モラルを失った発信者が今日のような状況で身勝手な言説を広められる状態はたとえ言論の自由があったとしても許されざる状況だと思います。

株価についてもどこまで下がるかは分かりませんが、10年後の世界の経済は今よりきっと良い状況だろうと思っています。

再び規制緩和の世界へ

短期的な事について言えば、各政府は混乱に見舞われる経済に対してバラまきとも言えるような政策を提案しています。各家庭にお金を配る、中小企業を中心に支援する、株価の買い入れを行う、などが挙げられるでしょうか。これらの行為は実質的に中央銀行が発行する貨幣の総量を増やす行為とも言えます。

米国もつい最近政策金利を一気にカットして0%というリーマンショック以来の低水準にまで引き下げました。

よく知られる経済理論的(それが何という名前の理論なのかは分かりませんが)には、貨幣の流通量を増やす事は、貨幣の価値を希釈して価値を下げ、インフレに対する追い風となってしまう、という認識でした。ただ、最近話題になってきたMMT(modern money theory)では、政府・中央銀行による財政拠出は必ずしも高インフレをもたらさない、という理論だと聞いていました。今の状況をより深く理解するためにも、こうした理論も少し知らないといけないと思い、MMTについて少し勉強してみる事にしました。

MMT(Modern Money Theory)

本書は1990年代に提唱されたというMMTの主要な論者であるランダルレイ氏がMMTについて解説した書籍です。政府がお金を発行するという今の状況に関して本書のMMTの立場を簡単にまとめると以下のようになるでしょうか。

現在のお金の価値は、政府の保障に基づく名目的なものに依存している。政府はまず支出をする事で債務を作り、マーケットにお金を供給する。納税という行為は政府がリリースしたお金を政府に返す事でしかない。政府の財政事情については、お金を発行したら返ってくる分、対外との収支を合わせれば常にバランスが保たれる。債務が増えたとしても、政府は中央銀行を介してキーを叩くだけでお金を生み出す能力があるのだから、現行制度のもとで債務不履行に陥る事は理論的にはあり得ない。また、完全雇用下にない状況では新たな仕事・価値を生み出すために新たな債務を増やすニーズが常にあるため、気をつける必要はあるものの、政府によるお金の発行がハイパーインフレをもたらす事はないだろう。

MMT理論では不況の時こそ、政府は通貨の流通量を増やす政策を取って対策すべきであり、そこに従来のようなハイパーインフレを過度に心配する必要は無いだろう、という立場のようです。

疑問点

ランダル・レイはMMTを自ら異端な学派と位置付けているような書き方で、常に批判に晒されているような事を暗示しつつ議論を示している。なので、いわゆる一般論と対比のようにして議論を進めています。

ポストケインジアンと言われるだけあって、ケインズが提唱していた経済学理論については肯定的のようではあります。ケインズはいわゆる需給曲線が成り立つのは完全雇用が成り立っているからだと主張し、完全雇用が成り立っていない状況、つまり職を求めている人がいたり、需要が追いつかない状況では需給のバランスが満たされるまで価格の変化が抑えられる、というものだったように思います。不完全雇用を考えた理論だったために不況の経済学とも呼ばれていた。表層的な話ではありますが、MMTが想定する状況も、完全雇用でない時はお金発行してもOK、という立場のように感じました。

ハイパーインフレについてはワイマール共和国やジンバブエの例を挙げ、特殊な状況下だと述べています。ドルやポンド、円のような通貨では起こらないという立場を取っていますが、通貨の信頼性が担保されている事を前提におきすぎているようにも感じ、経験的な議論が多く理論的な裏付けが薄い様に思いました。さらに、MMT自体も通貨発行自体がインフレの追い風になる事自体は認めており、結局は程度問題なのでは、と感じます。

また、政府の拠出を増やす事を推進する内容については、リーマンショック後の金融緩和政策で米国が再び成長軌道にもどったという事実も後押ししているような印象を受けました。

著者はかなり左寄りなのか、非常に高くなったCEOの報酬をはじめ、格差の拡大にはやや反対な立場のようで、MMTの利用は弱者の救済のため、というような主張があるように感じます。

今の状況に応用できるのか?

今回のウイルス騒ぎが実体経済に大きなダメージをもたらすとしたら、リスクを受け入れた投資家は別としても、働きたくても働けないような人を支援するための拠出は不可抗力で行う事になるだろうと思います。一方で税収は減り、バランスシートの拡大は免れないだろうと思います。経済活動が停滞してデフレになるのか、それともインフレが加速するのかは、MMTを読んだからといって自分では結論付けられないように感じます。

本書を読んでMMT信者になったかというと全くそうではなく、中央銀行をめぐるお金の動きの勉強にはなったな、というような認識です。ただ、自分の投資行動に大きな影響はないように思います。ここから下がるか上がるか分からない株価の予測はできませんが、数年ぶりの買い場ではあり、ゆっくりとヘッジ資産を切り崩しながら買い付けを続けるつもりです。

いつになるかは分かりませんが、新型コロナウイルス感染症も落ち着く日が来るかとは思います。幸いにして、日本の現状は重症者で医療現場が溢れ返る事が無いような範囲で収まっているようにも思います。できれば皆さんもパニックにならず、自身の身を守り、他人を思いやる日々を送っていただければと思います。

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