高金利時にレバレッジファンドが受ける影響を考察する(前編)

Finance

またまた、レバレッジETF関連の話題です。レバレッジETFとしてSPXL, EDC, TMFなどの分析を以前しました。レバレッジファンドのリターンは(大体)ベンチマークのETFから金利を引いたものという結果を得ました。気になるのは高金利の時にレバレッジETFを買った場合、金利分が差し引かれてどれくらいリターンが減るのかでしょう。

今まで2008年ごろに設定されたDirexionのETFを見ていましたが、レバレッジファンド自体はもっと前から存在するものがあるので、それらを使って1990年代ごろからの金利の推移とともにリターンの変化を見ていきます。

 
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参考にするファンド

見てみると、ミューチュアルファンド(投資信託)で、レバレッジがかかっており比較的古くから設定されているものが4つ見つかりました。いずれもベンチマークはS&P500です。
 
レバレッジ シンボル データ取得開始日
150%
RYNVX
1993-07-12
200%
ULPIX
1997-11-28
200%
RYTNX
2000-05-19
200%
RYTTX
2004-08-31
1.5〜2.0倍程度のレバレッジなので、借入額が50-100%程度ですね。金利が4%のとき、1.5倍のレバレッジなら2%程度の減価、2倍のレバレッジなら4%程度の減価すると考えます。実際には信託報酬分とかも引かれるのでもっと下がるはずです。年間に5-6%も下がったらコストが高すぎてレバレッジをかけるメリットが少ないようにも思います。
 
一方で、株式リターンをリスクプレミアム+リスクフリーレートと考えた時、金利分が引かれると言ってもリスクフリーレート分が失われているに過ぎないため、株式で得られるリスクプレミアムはトータルで見ればプラスになるから結果的にリターンは高い可能性も考えられます。

比較の方法

 
今回の比較もそれぞれのファンドの日次変動(%)をSPYの日次変動(%)にレバレッジ分をかけたものの差をとっています。リターンは配当調整済みのリターンを見ています。これにより1日あたりの乖離幅を見ています。また、毎日の乖離幅を掛け合わせることで、1年間にどの程度の乖離が生じているかを年ごとに見てみました。
 
乖離幅(%/日) = レバレッジファンドの日次変動(%/日) ー SPYの日次変動(%/日) × レバレッジ
 
1年あたりの乖離(%/年) = Π((100 + 乖離幅(%/日))/100)
 
Π: 総乗(すべての積)
※2000年の乖離を知りたい時、2000年1月1日〜2000年12月31日までの積をとりました
 
金利は1990年代からだと高いときで6%くらい、低いときは0%程度です。期間毎にどの程度かわかるようにその年の初めの金利を掲載しています。(細かい情報はFREDを見れば載っています)それと、年ごとのS&P500のパフォーマンスとULPIXのパフォーマンスも比較してみます。(後編で紹介します)
 

FF金利の推移

 
 
https://fred.stlouisfed.org/series/FEDFUNDS
 
 
FRB金利の推移を見てみます。1980年代から続いた金利の低下も1990年代前半で一服しました。1990年代は今から見ると比較的高金利で推移します。しかし2000年頃のリセッションに合わせるようにして金利は一気に1%まで下落します。その後急速な利上げを始めて一旦金利を5%程度まで上げましたが、リーマンショック後の不景気で金利は0%まで低下しています。2016年ごろから徐々に利上げが始まり現在2%前後の政策金利であることがわかります。
 
このことから、1990年代や2004-2007年ごろはかなり重い金利の支払いによりレバレッジファンドは思ったよりもパフォーマンスが悪いかもしれません。
 

日次のパフォーマンス

 
RYNVX, ULPIX, RYTNX, RYTTXのそれぞれのパフォーマンスを見てみます。リーマンショック前までは日次の乖離がプラスにもマイナスにも大きいように思います。また、大きく動いた日では、1%以上乖離しているような日も多くあります。リーマン後はプラスマイナスの乖離の幅は比較的少なくなっているようにも思えます。歴史的な経緯を考えると、HFT(high frequency trading)が使われるようになってトレードの効率が良くなったのかな?なんていう気もします。単純に金利が低いからなのかもしれません。
 
<RYNVXの日次乖離>
 
<RYTNXの日次乖離>
 
<RYTTXの日次乖離>
 
<ULPIXの日次乖離>
 
 

日毎の乖離の月ごとの平均

 
月ごとにまとめた日次変動の平均を見てみると、やはり金利が高かった1990年代や2004-6年ごろは明らかに下方に乖離しているのがわかります。単純に2倍のリターンが得られるよりも金利分くらいはリターンは少なさそうで、残念です。
 
<RYNVXの日次乖離の平均>
 
<RYTNXの日次乖離の平均>
 
<RYTTXの日次乖離の平均>
 
<ULPIXの日次乖離の平均>

まとめ

毎日の乖離を見ていくと、金利が低いこの10年ほどに比べて、金利が4-5%にもなるような時期はレバレッジファンドは金利の影響を大きく受けることがわかりました。次回は具体的に何%ほど理想的な値動きから乖離しているのかを紹介します。
 
 
今後利上げが続いて金利が上がったときに株価が割高でいいリターンを得られていないとレバレッジファンドは金食い虫になる可能性も考えられますね。
 
ただ、実際のリターンを見てみると少し変わった傾向が見えてくるので、次回の記事では数値で見ていきます。年間あたりでどの程度乖離しているのか、実際の年単位のリターンはどうなのか?
 
実際の経済政策を考えると、低金利にするのは不況の時だったりすので、低金利でレバレッジに飛びつくと、不況のあおりを受けてS&P500の倍の損をしているかもしれません。高金利の好景気のときに勇気を出してレバレッジをかけると景気の波に乗って素晴らしいリターンを上げているかもしれません。

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