レバレッジETFの乖離を詳しく見てみる(TMF編)

Finance

レバレッジドETFの価格変動についての考察もついに3つめまで来ました。前回まで、株式インデックスのレバレッジドETFである、SPXLやEDCの価格変動について見てきましたが、今回は長期債券ETFのレバレッジドETFである、TMFについて考察していきます。

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TMFの構成

TMFもこれまで見てきたレバレッジドETFと似たような構成です。

TLTと、TLTのスワップ、それとキャッシュに相当する構成となっています。純粋にTLTを持っている以外にも、TLTのスワップにより、TLTの価格変動と分配金を得る代わりに債券の金利を支払っています。キャッシュ分は少ないですがここからも金利を受け取る権利が発生していそうです。なので、今回も、

(TMFの1日の価格変動) = (債券価格の価格変動) × 3 + (債券で得られる金利リターン) ×2〜3 −(金利)×2

という式が成り立つと考えられそうです。しかし、債券のSWAPというのも不思議なものです。債券の金利を得るために金利(ほぼ債券の金利と同じと思われる)を支払うなんて。実質は債券価格の変動がもっともスワップ分のリターンには影響しそうです。

債券スワップについてはこちらの記事を参考にしています。

Bond Swap
A bond swap consists of selling one debt instrument and using the proceeds to purchase another debt instrument. Investors engage in bond swapping with the goal ...

TMFとTLTの値動きの乖離

1日毎の乖離

TMFの1日の値動き幅から、TLTの1日の値動き幅を引いた日次のグラフを示します。今回もTLTはadjusted returnを参照しているので、債券価格変動と金利リターンがここに織り込まれているはずです。1日の平均の乖離は-0.0112%、乖離の絶対値は0.148%です。一日の平均の乖離がこの程度だと、設定当初から年率の乖離は2.2%程度だったことになります。これはこれまでに見てきたSPXLやEDCと比べるとかなり少なめの印象です。乖離の絶対値はトラッキングエラーに相当すると思われますが、他のレバレッジドETFと同じくらいでしょう。

TMF、TLTの分配金はadjusted returnの中に織り込まれますが、TMFでは年に1回程度1%近くずれる日があるようですがその乖離は1日程度で回収されています。2016/12/1, 1/4, 2014/12/18, 6/13などですが、なぜこうなっているのかは良くわかりません。

 

月ごとに平均した乖離

月ごとに1日の乖離を平均したすると以下のグラフのようになりました。設定当初は激しくずれることも有りましたが、2010年代前半は比較的落ち着いています。そして、利上げの影響の成果、直近2年ほどはやや下方にふれています。直近365日で発生した乖離はTLTの値動きの3倍に対して、−3.39%でした。今後金利が高くなるとこの乖離幅はより下方に向かっていくと思われます。

 

金利との関係

ところで、この3.39%が意味するものは何でしょうか。レバレッジを掛けるための金利とすると、1の資産に対して2を借りているはずですから、年率で1.7%程度になります(ETFの信託報酬約1%もあるので1.2%/年?)。債券スワップは異なる債券の金利差があるから成り立つものですが、支払っている分の金利は何でしょうか?代表的な金利であるLIBORだとすると直近1年の平均がそれくらいになるので妥当かもしれません。想像でしかないので、詳しい方がいらっしゃったらぜひ教えてください。

US Dollar LIBOR interest rates in 2018
USD LIBOR 2018, US Dollar LIBOR 2018

SPXLと比べるとTMFではやや乖離幅が少ないのが気になるところです。株式のレバレッジドETFは商品構成に由来する以外にも取引などで生じる乖離はやはり大きそうです。

個人的に、TMFは債券の変動による株式の下落のヘッジの役割がメインで、金利収入はもっと少ないものかと思っていましたが、金利分の収益がちゃんと入っていそうなので安心しました。金利が全くなければTMFのリターンは7-8%/年程度落ちると思われますが、TLTの3倍にかなり近いということは、金利分のリターンは現在の金利水準(2.5〜3.0%/年)でも7-8%/年程度得られていそうです。もちろん支払う分の金利もあるのでそれよりは落ちますが、TMFは株式の変動のヘッジ以外にも固定的な収益(fixed income)もちゃんと得られそうです。

利上げが進んでFRBの長期金利が4-5%程度になった一方でLIBORが比較的低いようなときは、この乖離があまり広がっていないことを確認したうえで、TMFを買い増すのはいい作戦かもしれません。

今回の式は

ΔレバレッジドETF =  ΔインデックスETF × 3 + 分配金 ×3 − 金利×2

で表しましたが、それなりに良い近似ができるような気がしてきました。リターンから金利分が引かれるって言うことは結局レバレッジドETFのリターンはリスクプレミアムと密接な関係があるような気がします。当初昔のレバレッジドETFのリターンのシミュレーションをしていましたが、解析でわかってきたことを使えばもっと精密なシミュレーションができるかもしれませんね。その場合、おそらく70年代ごろの利上げの時期はかなりレバレッジドPFの成績は悪く、80年代も思っていたよりは良くないだろうことが想定されます。

コメント

  1. 米国株ルーキー より:

    はじめまして。hiroさんのHPからKernelさんのブログにたどり着きました。
    個人的に興味があったモメンタムの考察など、非常に参考になる記事ばかりで一気読みをしてしまいました。今後も継続的に拝見させていただこうと思います。

    今回、質問が一点ありコメントさせていただきました。
    SPXLが金利上昇に伴いリターン低下するのは理解できたのですが、TMFについてはどうなるのでしょうか?
    ΔTMF = ΔTLT × 3 + TLTの分配金(≒20年米国国債金利) ×3 − LIBOR?×2
    とすると
    今後の金利上昇に伴い、TLTの分配金(国債金利)もLIBORも同程度の上昇をするのでしょうか?であればTMFのリターンは金利上昇に関わらず一定ということなのでしょうか?
    LIBORというものが何なのか理解できていないので的外れな質問かもしれませんがご教授願えると幸いです。

    もし、TMFも金利上昇とともにリターン低下するのであれば、EDV等の超長期債券での代替手段(以前hiroさんのブログで質問させていただいたのですが)もやはりあり得るのかな?と思っています。

    以上よろしくお願いいたします

    • drkernel drkernel より:

      ありがとうございます。普段は自分の気になることの備忘録的なことを書いているだけなので、もし気になることがあって数値的な解析が必要なら、コメントいただければ記事のネタにもなるのでお教えください笑

      TMFにかかる金利についてですが、長期債のスワップ取引の際に金利がかかっているはずです。LIBORかな、とも思ったのですが、米国の短期金利でも別に問題ないはずです。Direxionが取引に使用しているスワップの商品の内容がわからないのであくまで想像です。TMFの商品構成ではfuture(先物)が記載されていなかったのでスワップ(長期債の価格変動と金利を受け取る代わりに金利を支払う)のみを使用しているはずです。
      (LIBOR自体は短期金利の指標のことです→ https://ja.wikipedia.org/wiki/LIBOR )

      その前提からは、TLTの分配金はほぼ長期債の金利に相当していて、TMFで支払っている金利は短期債の金利に相当しているのではないかと思います。通常長期債の金利は短期債の金利よりは多いはずですが、今のようにイールドのフラット化が進行していると(得られる金利 – 支払う金利)がほぼ0に近くなって、金利分から得られるリターンが少なくなるような気もしています。

      利率の変動のことを考えると、長期金利が上がると長期債自体の値段が下がるのでTMF自体の価格が下落すると思います。なので金利上昇のときはできればTMFを持つのは避けたいところです。でも現在の債券価格にある程度の金利上昇は織り込まれているので、問題は長期金利が想定よりも上がるかどうかだと思います。

      高金利のときにTMFを買った場合を考えます。(得られる金利 – 支払う金利)については流石にマイナスにはならず、得られる金利は投資額の3倍になっている一方で支払う金利は約2倍であるはずなので期待リターン自体はプラスとして良いと思います。最近の記事でレバレッジを上げていくと債券の期待リターン/リスク比が下がるのでポートフォリオからは割合を少なくしたほうがシャープレシオが上がる、とは書きました。ただ、高金利で株高になっていた場合に株式下落に備えてTMFをある程度持っていると、不景気になって金利が下がったときに長期債の価格が上昇する恩恵も受けられる可能性があるかと思っています。

      EDVでの代替についてですが、まずTMFとEDV自体の残債期間はそんなに変わらないので商品の性質としてはレバレッジがかかっているかどうかくらいが大きな違いかと思います。金利変動による価格変動がTMFではEDVより激しくなります。金利支払いを考えると年間の期待リターンはTMFもEDVもおそらくあまり変わらないと思うんですが、株式と債券の負の相関を信じて、株式下落のヘッジのために債券をもつのであればTMFの方が効率的である可能性があります。もっとも、株も債券も一緒に落ちたらTMFはEDVよりもより酷いダメージを与えてくると思います。

      あくまで私個人の考察なのでこれであってるかわからないのですが、参考になれば良いですが。というか長く書きすぎましたね。今後ともどうぞよろしくおねがいします。

  2. 米国株ルーキー より:

    早速のご回答ありがとうございます。
    ということはTMFは、順イールド(こんな言葉があるかわかりませんが。。)では金利変動によるリターン低下はそれほど無いものの、イールドのフラット化や今後予想される逆イールド化など長短金利差が縮小もしくは逆転する場面ではリターンが悪くなりそうということでしょうか。

    EDVの件は、ちょっと言葉足らずで申し訳ありません。
    EDVはデュレーションがTLTの1.5倍なので、1.5倍レバレッジのかかったTLTとみなすことができる。しかし、当然ですがEDVはレバレッジがかかっていないので、上記のような逆イールド化が起こった場合でもリターン低下はない。よって逆イールド化の場面ではTMFよりEDVを採用したほうが良いのではと考えた次第です。しかし、よく考えてみると逆イールド=長期金利が低下しているわけですからEDVの分配金も低下しているわけで、結局有利な点などないのかもしれませんね。

    最近気になっている点は、長期金利が3%程度しかない昨今の状況で株の暴落が起こった場合、株の下落分を相殺できるほど長期債券価格が上昇してくれるのかな?という点です。仮に株が50%低下したとすると、デュレーション17年程度のTLTでは金利が3%下がらないと相殺出来ませんよね。そんなに下がらないとなると、株下落ヘッジとしての最適な株債券比率はもう少し債券寄りになるのではないかなと思っている次第です。

    最後は質問ではなく、単なる悩み相談みたいになってしまいましたが、今後ともよろしくお願いいたします。

    • drkernel drkernel より:

      確かに、残債期間が17年と24年のTLTとEDVでは金利の変動に足しての値動きはEDVがTLTよりも大きくなりますね。TMFでも債券の期待金利収入がTLTと対して変わらないのであれば、EDVにするのもいいかもしれませんね。ただ、残債期間が伸びたからと言って債券のリターンという点ではTLTもEDVもあまり変わらないかもしれません。それでも手数料がEDVは低い分有利ですね。
      おっしゃる通り、私も今の債券利率では株式の下落ヘッジにはやや心もとないように思います。それにたとえ金利が下落しても20-30年の長期金利が1%とかの水準に下がることは無いような気がします。