プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (Max Weber)

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宗教的教義が資本主義を形作った訳

社会学の祖といえば、マックスヴェーパーで、本書はその金字塔として有名。

本書は、近代になり興ったキリスト教の一宗派であるカルヴァン派の考え方が、現代の資本主義に与えた影響を考察した論考だ。この宗派の根本的な考え方は、当初意図していなかった経緯を経て、現代の資本主義の合理的な経済追及に関する考えの基礎になったと主張する。この考え方=プロテスタンティズムでは、禁欲的な態度を推奨し、天職としての職業に励むことを推奨する。この考えが発展した国、特に当時まだ比較的新しい国だったアメリカに流入したカルヴァン派の人々は旧世界よりも資本主義の考え方が色濃く出ている。

本書では思想的な背景がどのように社会に影響を与えたのかが、緻密な考察によって論じられる。あまり長々と書くとボロがたくさん出るのでエッセンスのみだけ紹介としておく。近代の本の中でも非常に有名なものなので、教養としても一度は読んでみることをお勧めする。特に、本書は書かれた内容よりはむしろその論じ方、対象が結果に与える影響を考察する際に、対象についての精確な議論を展開して論理的に説明することで、それまでの常識を打ち破るような結論すら導き出されるスタイルが後世に影響を与えたのだと思う。

現代で社会学者というとちょっと胡散臭いことを言ってる人達みたいなレッテルを貼られていることが多いような気がしないでもない。ただ本書のように十分な根拠と論理を持って議論を行える人なのかどうか、というのを有象無象の記事を読むときにもよく考えながら判断したいものである。

もっとも、本書の本文は比較的明快に書かれているように思われたが、注釈まで含めた大きな風呂敷も含めた全てのつながりの理解まではちんぷんかんぷんだったので、またいつか読み直してみたいと思った一冊だった。

ところで、最近は統計だのエビデンスだのと、数値至上主義なところがあるような気がする。「FACTFULNESS」もそうだし、「シグナル&ノイズ」にしても、データの中に埋もれた世の中の真実を覗き見る、というのがさも絶対的に強いように思う方も多いかもしれない。しかし、本書のような記述的な分析の重要性は実は今の世の中でも変わっていないと思う。数値解析は確かに定量的な分析ができる分便利である。しかし、因果律という視点からは有意義な情報をもたらすことはない。あくまで何かを決定するために統計が活躍する際は、仮説をベースにその検証として行われるべきだというのが私の考えだ。このような仮説を組み立てる際には本書のような綿密な議論をする能力が生きるのだろう。もっとも、本書で提示された論考には批判も多く、資本主義成立の完璧な議論とはみなされていない様子だ。

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