オルタナティブ投資入門(山内英貴)

Book

オルタナティブ投資入門

エンダウメント投資戦略を読むのと一緒に読んだ本。エンダウメント投資戦略は、現代ポートフォリオ理論に基づいてアセットクラスを分散させて安定して高いリターンを生む戦略だった。その中で高い割合で組み込まれていたのがオルタナティブ投資の部分である。
 
 
 
出典:Harvard Management CompanyよりGCIアセット・マネジメント作成。
 
 
本書の著者はエンダウメント投資戦略と同じ、GCIエンダウメントファンドを率いる山内英貴氏だ。本人がエンダウメントににた戦略をとったり、オルタナティブを特異としていることもあって、多少はポジショントークである点も考慮しなくてはいけないだろうが、本書はオルタナティブ投資の考え方を理解する入門書としてはとっつきやすい。
 
内容は比較的幅広い手法をカバーしており、ヘッジファンドの投資手法がわかる。数学的な部分などは細かくは書いていないが、投資手法の理論的裏付けにも触れているので信頼感がある。
 

基礎知識とヘッジファンドについて

 
本書は4章構成で、初め2章で、オルタナティブ投資の基礎知識とヘッジファンドを紹介している。投資をする人であれば知っておいて損はない、現代ポートフォリオ理論でノーベル賞をとったHarry Max Markowitzや、シャープレシオに名前が出てくるWilliam Sharpeなどの有名な経済学者や、インデックス投資についてさっと触れられる。
 
 
特に重要なのはβが市場全体の動きと比較した動きを表していることαを生み出すのが1. リスクを上げずに超過したリターンを得た時、2. リスクを上げずにベンチマークと同等のリターンを得た時であることだろう。市場の平均であるβと超過リターンであるαを見ることで投資運用者のスキルが比較できるようになった。そして、αを追い求めるためにアクティブな運用者は市場の歪みを利益に変えていく。
 
 
ヘッジファンドは投資対象は何でもありなので、非公開株や、実物資産でもなんでの投資する。ヘッジファンドとは、
 
  1. 投資戦略の柔軟性が高く
  2. 絶対リターンを追求し
  3. 成功報酬体型を採用するファンド

(引用元: オルタナティブ投資入門)

というのが一般的な定義だ。その歴史は浅く、初めて設定されたのも第二次世界大戦の後、1949年ごろだ。成功報酬型であるファンドへは優秀な人材がどんどんと流入して現代でも成長を続けている。
 
 
ヘッジファンドはマネージド・フューチャーズと呼ばれる先物投資出身者が多かった、そして、ジョージ・ソロスを始めとするグローバルマクロが流行した1990年代、アービトラージを積極的に行うマーケットニュートラル戦略、などと様々な戦略が入り乱れる時代になっている。
 
 
ヘッジファンドを利用する代表的な投資家は、超富裕層や大学財団、プライベートバンク、保険/年金基金/銀行などと、前半はあまり普通の人には縁がないような団体が連なる。
 

基礎編・実践編

 
第3部の基礎編は実際の投資戦略が解説されているが、書評で一気に紹介するにはやや手狭なので省略する。様々な戦略の中で特徴的なのは、市場の歪みを見つけ出すこととその歪みからリターンを得る手法だろう。上がりそうな株をロングして下がりそうな株をショートすれば株式市場全体の動きを打ち消して理論上はαを得られる。
 
 
ヘッジファンドには優秀な頭脳が結集して、世の中にあふれる情報から一筋の手がかりを得てそこに投資する。世間では「ハゲタカ」などと呼ばれることもある彼らだが、実際に行っている投資手法は理路整然としており、また彼らが大きなコストを掛けながら市場で活動することで市場が効率的な価格に近づくという側面もある。
 
 
リスク管理も徹底している。ヘッジファンドでは収益を上げること自体がファンドマネージャの収益にもつながるため、ファンドマネージャも必死である。
 
 
実践編では実際にヘッジファンドに投資する時のことなどが書いてあるが、前半で紹介したようにヘッジファンドの主な投資家は私達に近いとは言いにくい存在であり、すこし遠い話のような気がした。リキッドオルタナティブと呼ばれる、流動性のあるファンドが海外では投資しやすいようだが、日本国内でヘッジファンドと関わりを持つような人は個人投資家の中ではごく僅かだろう。興味があったら調べてみると良いかもしれない。
 

感想

 
入門書としてよくまとまっている本で、大学の教科書にも使われているらしい。内容は難し目の事がかいてあるし、専門用語も頻繁にでてくるが、各ページに用語解説もついているのでファイナンス用語の勉強にもなる。基本的なポートフォリオ理論や用語の勉強にもなる。大半はヘッジファンド関連の投資手法が解説されるような感じだ。
 
 
ロング・ショート戦略のマネごとなどは個人投資家でもできるだろうが、実際にアービトラージなどを高速の取引システムなどで行っている個人投資家はまずいないだろう。知ったからと言ってプロに追いつけるわけではない、というのはよく感じた。ただ、市場の歪みを見つけたらどのように振る舞えばいいのかは本書にヒントがあるかもしれない。
 
 
ところで、私は本書を買った時、現物資産(コモディティとかREITとか、、、)の投資を勉強したくて買ったのだが結局殆どの内容はヘッジファンドについてだったので実はいろんな意味で期待を裏切られている。
 
 
投資手法で特に気になるものがあれば今後ネタにしていくかもしれません。

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