読みたいなと思っていつか買っていた本だったが、積ん読になり、放置していた。
ヨーロッパ最高の知性と呼ばれるジャック・アタリ氏の2013年の著作。
21世紀の危機
副題にもなっている通り、環境変化目まぐるしい21世紀において、国家、個人はどのようにしてサバイバルしていくのかについて述べた著作になる。
フランスのブレインだけあって、本当に世の中の動きー政治、経済はじめ、新技術についても詳しく、情報量が多い文章である。世界の現状から、潜在的にこれから世界のリスクとなるものがどのようなものなのかを様々に予測している。国家間のいざこざを始め、疫病がリスクになりうる、と2020年頃に読むと、そうだよなぁ、というような危機も含まれている。様々な角度からリスクというものは大から小まで可能性を上げて検討する必要があるのだろう。
ジャック・アタリ氏というと、未来予測が非常に有名だが、積ん読になってしまっていた数年間の間で実際にこうなったなぁ、という流れもあれば、そうでないものもある。もちろん未だ訪れていない危機で本書で触れているものも来るかもしれない。
危機を乗り越えるフレームワーク
本書の核となるのは、こうした危機をどのように乗り越えていくのか?そのフレームワークを紹介することにある。フレームワークは7つにまとめられ、以下のようにして紹介される。
1)自己の尊重
2)緊張感
3)共感力
4)レジリエンス
5)独創性
6)ユビキタス
7)革命的な思考力
詳しくは本書を確認していただければと思うが、予想もしない未来の出来事に対して柔軟に対応していくためには、常に自分を高めて情勢を読み、自ら考えて柔軟に行動を続けること、が大事なのだろうと感じた。逆に言えば、現状に甘んじて努力を怠ったり、思い込みや決めつけをしたり、独りよがりだったり、そもそも変化に弱く状況が読めないようでは、今後厳しいだろう。
個人、集団の様々な単位で同じフレームワークで問題に対処することが奨められており、大きな機関を動かす影響力をもつようなアタリ氏ならではのスケールの大きな話も含まれている。
アタリ氏の思い描く未来図
若干この数年では聞かなくなった気がするが、ノマド的な性質がこうした危機対応能力の上では重要視され、アメリカは特にこのノマド的国家として、強い国であろうと言われる。しかし、本書の時点で過去のものであったリーマンショックで劇的に債務拡大で乗り切ったことに対し否定的であったアタリ氏が、コロナショックを乗り切るために世界各地で行われている債務拡大についてどのような評価をしているのかはまさにホットな話題として意見を見てみたい。
本書で数ページだけデジタル通貨(ビットコイン)について触れられているところがあるのだが、本書の後にビットコインが2度の大きなバブルを迎えたことを振り返ると、本書や最近のアタリ氏の著作の中には2020年代に来たるブームも織り込まれているような期待を持って読みたくなる。
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