都内のマンション価格の推移を2019年までのデータで見てみる

Finance

最近不動産市場は流動性がやや落ちてきているようですが、マンションの価格はどのように推移しているのでしょうか?以前都内のマンション価格調査をしていたときに利用していた解析スクリプトを掘り起こして、最近の中古不動産市場を分析してみることにしました。

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取引価格の変化

データは国土交通省の土地総合情報システム( https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet )から取得します。ここから2005年から2019年前半までの都内の中古不動産の取引情報約40万件を取得しました。このデータを地図データと合わせて解析してプロットしていきます。指標はなるべく比較しやすいように平米(1平方メートル)あたりの取引単価とします。

解析の際にマンションと一軒家、間取り、など価格決定に影響する因子を調整していないため、このデータが必ずしも物件価格の参考にならないことには注意をしてください。また、データを利用して実際の売買を行うのは危険と思います。

最初は2011年〜2016年の東京都の不動産の価格と2017年以降の価格を比べてみます。2017年以降の取引価格は中央値が約60万円、平均値が約70万円です。2011年から2016年では中央値が約50万円、平均値が58万円でした。これだけを見ても2010年代の前半と後半で20%ほど取引価格が単純に上がっていることがわかります。平均値が中央値よりも高いので、値段が高い方に裾野が広い分布をしています。

横軸は平米あたりの不動産取引価格。縦軸はその取引が何件あったかを示します。データは2017年以降の取引データ。

 

取引価格の分布を地域別に見てみます。まずは2016年以前に取引されたデータ。

町名ごとの取引をまとめて中央値を算出して、都内23区の地図上に値段ごとに色付け。赤い方が高く、青い方が安い。白は中間。データは2012年から2016年の取引情報

白が約60万円で、安いほうが青、高いほうが赤に色塗りされています。

都心に高額そうな物件が集中していることがわかります。都心部以外は都心に比べると価格は落ちますが、それでも他の地方都市に比べてもだいぶ高額な物件が多いと思います。東京の南西部の方は都心と同じくらいの高額な物件が多そうですね。

2017年以降のデータも比較してみます。

町名ごとの取引をまとめて中央値を算出して、都内23区の地図上に値段ごとに色付け。赤い方が高く、青い方が安い。白は中間。データは2017年から2019年前半までの取引情報

2017年以降のデータでは都心部分は更にマップの赤色が増えています。都心の方では濃い赤で塗られる部分が増え、さらに値段が上がっているようです。周辺部も絶対的な値段の上昇は都心部ほどではありませんが上がっています。墨田区〜江戸川区の辺りは青いままです。

 

これは以前、記事にも同じようなマップを載せたかと思うので、新しい取引情報が加わった程度の情報です。

 

取引価格の地域別の変化

物件の町名でマッチさせて、同じ場所にある物件の価格がどの程度変化したのかも見てみます。今度は2012〜2016年、2017年以降の比較です。

2012年から2016年の期間と2017年から2019年前半の期間でそれぞれの地域ごとに平米単価がどの程度変化したかを示すヒストグラム。横軸は変化量(%)。縦軸は確率密度。

変化幅(%)をヒストグラムにすると、+0〜20%のところに山があります。4年間でこの程度の取引価格の変化があったようなのでこの何年かは平均して不動産価格は2-3%くらいは毎年値段が上がっているような印象です。

 

町ごとにその変化を色塗りしてみると下のようになりました。

2012年〜2016年、2017年〜2019年の期間での町名ごとの価格中央地の変化量をマップにしたもの。変化率(%)を色付け(マイナスが青、プラスが赤)した。取引が少ない町では本来の不動産価格から大きく乖離するため、かならずしもその町の物件の価格の変化を表しているわけではないことに注意。

最初の価格分布と違い、こちらはモザイク状になっています。これは取引された物件自体が同じものではないので、物件のブランドや構造、駅からの距離、間取りなど様々な要因によるばらつきが大きいためです。ただ、なんとなく目をっ子らしてみると、六本木周辺やら日本橋、文京区の辺りなどは全体的に赤みが強く、2010年代に値段が大きく上がった場所だと考えられます。

 

人気エリアの価格推移

そこで、エリアを区切って、エリアごとに年代を追って取引価格がどの程度変化しているのかを追ってみました。対象にしたエリアは千代田区番町エリア、中央区日本橋エリア、文京区本郷〜春日エリア、渋谷区恵比寿エリア、港区六本木エリアです。これらのエリアは高級住宅街が立ち並ぶエリアですが、年代ごとに取引価格を見てみるとこのような推移が見られました。

人気住宅地エリアごとの平米単価の平均を年代ごとにプロットしたもの。横軸が取引年代、縦軸は平米単価

2008年のリーマンショックの辺りで日本の不動産の価格も一旦落ちましたが、文京区や番長は比較的落ち幅が少なかったようです。2012年頃を底にして、2010年代後半はいずれのエリアも値段がぐんぐん上がっています。2019年はまだ半分しかデータがありませんが、まだ価格が上がっていそうな雰囲気です。

 

今後マンションの価格がどうなるかは予測が付きませんが、ご近所さんが自宅を強気な価格で売りに出していたりするのも最近見かけていて、皆強気だな、と感じます。今回比較したようなエリアは都心なのでまだまだ10年は人口が増える地域で需要も衰えないでしょうからすぐに下がるということは無いようにも思いますが。

 

物件自体の間取りの感じとか、築年数など、様々な要因が実際には価格に反映されます。取引情報から重要そうな因子(エリア、築年数、広さ、間取り、用途、取引年数)などを調整して、対数変換した平米単価を回帰したりして(ややこしいのですが要望が強ければ詳細も書きます)算出してみた平米単価もプロットしてみました。同じ条件の家を買った場合の平米単価の推移だと思ってください。ただ、そもそもこれが正しいのかどうかはよくわかりませんでした。モデルの式を変えるだけで結果が変わってしまうのでその程度のものです。

家の価格を決める要因の影響を取り除いた上での平均的な価格を算出してプロットしたもの。算出には、交絡をIPW統計量により調整した上で、取引価格の対数値を回帰式で予測して、取引価格(縦軸)を算出して年代(横軸)ごとにプロットしている。

終わりに

本筋とは関係ありませんが、昔書いたコードを見直して、以前よりもスッキリとしたコードがかけるようになったなぁ、というのが実感です。たまに昔の分析を見直したりすると間違いなどもわかり勉強になりますね。

 

今回都内の取引だけ示していますが、日本の中で東京は近年は非常に堅実に価格が推移しています。人口減が心配される日本の中で、様々な地方、国から人が集まる東京はもう少しは発展を続けるように思います。ただただ、値段は高いですよね。リーマンみたいな暴落が起きたら安く買えて良いかもしれませんが投資資産などが暴落してそれどころではなくなってしまうかもしれません。

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