株価がここのところ下落しています。一方でビットコイン投機家は値上がりするビットコインを愛で、「俺たちの時代がまたやってきたぜ!」とも言わんばかりです。株式投資家とビットコインがわかり会うときは来るのでしょうか?
最近また少し値上がりしたビットコイン
ビットコインといえば、何かとお騒がせなアセットクラスとして有名です。Mt. GOXで大量のビットコインが流出した不祥事で一躍名を轟かせ、2017年にはビットコインバブルにより、億り人が大量にでました。2018年にはバブルが弾けて損をした人も多かったはず。バブルのときは1BTC = 2万ドルにまで達しましたが、その後1BTC = 3000ドル程度まで下がりました。値動きも毎日10%程度上下するような、とても激しく値動きする資産です。
ビットコイン自体は、流通量が規制されており、マイニングを通じて少しずつ発行されていきます。ビットコインバブルの時にはブロックチェインという技術が革命のようにして取り扱われました。ビットコイン擁護派の意見としては、ビットコインの「改ざんできない、信用性が高い、流通量が限られる」という性質が通貨としての性質を保ち、値上がりしていくのだ、というものでした。
しかし、バブルは弾けるもので一気にビットコインの価値は縮小します。このまま消えて無くなるかな?と思いきや2019年になり、また値上がりが見られるようになりました。Facebookが2020年にリリースすると言われているリブラに期待が持たれているのでしょうか。
ビットコイン投資?投機?
個人的には、ビットコインへの信頼性よりは米国や日本という国に守られた通貨のほうが安心して使えるという意識があり、そこまでビットコインが将来価値を高めるとまでは思っていません。ただ、ブロックチェインは金融や医療などの信頼性が必要な情報のやり取り自体には有用な技術であり、どこかで活躍の場を見つけるんじゃないかとは思っています。
この1週間ほど株価がずるずると下がっていく中、BTCは上がり調子で、「株価と逆相関でもしてるのか?」なんてことを思っていました。(青:S&P500, 水色:ビットコイン/USD)
ビットコインはそれ自体で価値を生むものではないので、投資ではなく”投機”の部類に入りますが、これはゴールドなどのオルタナティブ資産の一部にも言えることです。投資をする上で株との相関を見てポートフォリオに組み込めないか考えてみます。
ビットコインと他のアセットクラスとの相関関係
Pythonを使って値動きのデータを取得して、各アセットクラスと株式の相関係数を求めてみました。まずは2019年全体の相関を見てみます。株に対して、BTCは確かに相関係数はマイナスになっています。ただ、非常に相関自体は弱く、株式とは無関係に値動きする、といった捉え方のほうが正しいように思います。
相関係数 (2019年) |
BTC | 金(IAU) | 長期債(TLT) |
S&P500 | -0.162 | -0.107 | -0.458 |
ビットコインの値動きが捉えられるのが2010年からなので、2011年以降のデータを解析してみると、より、ビットコインは株価とは無関係に値動きする資産であるという印象を受けます。
相関係数 |
BTC | 金(IAU) | 長期債(TLT) |
S&P500 | 0.02 | -0.03 | -0.473 |
右に示した金や長期債もそれぞれ株式と無相関だったり、逆相関、という関係が見られています。冷静に考えると、株式が売られて値下がった際に買う先でBTCを選ぶ人はかなり少ないと思います。債券が吸収しているようなお金の流れがBTCに流れようものなら相場は毎日今以上に荒れることになるはずです。(BTC自体の総額は23兆円程度しかありません。数千兆円と言われる株式市場、債券市場に比べれば小さいものです。)
視覚化した日々の値動き
日々の値動きの関連を視覚化してみます。横軸はS&P500の日々の値動き。縦軸にそれぞれ金、債券、ビットコインの値動きをプロットしています。
まず、株式と金の値動き。これと言って傾向はなく、円のように点が散らばっています。これは金と株式の値動きに相関がほとんど見られないことを示しています。
債券と株式の値動きでは分布は楕円状になり、若干右肩下がりになっています。これは株式と債券の値動きに弱い逆相関があるためです。
そして、ビットコインは、というと、
円とまでは行きませんが、傾きは少なく、ほぼ無相関といって良いと思います。上下と左右に点が広がりがちで、その間は少し凹んでいるというのは、株式市場が荒れる時だからといってビットコイン市場は荒れないし、逆も然り、ということでしょうか。
市場はビットコインに(少なくとも昔は)あまり興味はない。という印象です。
ところで、ビットコインの縦軸の単位は株式の10倍くらいの縮尺になっていることにも注目ですね。
経時的な相関
同じ相関係数でも金と株式、ビットコインと株式ではプロットの形状が違うのは気になります。市場が荒れるタイミングに乖離があるような印象があるからです。
1ヶ月の期間の日時の値動きを調べて、その範囲内での相関を調べてみました。それぞれのラインは株式との相関係数を示しています。青がビットコインと株式、オレンジは金と株式、緑が債券と株式の相関です。
2019年の範囲ではビットコインと株式の相関は0.4程度が最大で、だいたい0から-0.2程度の範囲で、あまり相関は無いようです。
これを2011年以降の範囲で見てみると、ごちゃごちゃしていますが概ね強い相関はなさそうです。
結論的にはビットコインと株式の値動きにはほとんど相関はなさそうです。
ビットコインに投資!?
ビットコインと株式に相関が無いのであれば、ポートフォリオのショックアブソーバーとしての活用方法はあるかもしれません。仮に無価値のデータにならないのであれば、ポートフォリオにビットコインを組み入れるのも戦略の一つにはなりえます。
ただし、ビットコインは将来的に値上がりするか保証はない、適正価格が測れないため割安かどうかもわからない。などの理由でそもそもポートフォリオに入れる事自体がナンセンスだという意見も強いだろうと思います。
ただ、金や現金など、リターンを産まない資産も一定の役割があることもあり、一概に否定はできません。ただ、値動きには注意です。金、長期債、株式などに比べて10倍(ときには無限)のリスクを想定する必要があり、そこから考えるとポートフォリオの安定に活用できるビットコインは金の10分の1程度なんじゃないでしょうか。
私も2017年頃に買ってみたビットコインが1%ほどありますが、特に活躍の場を持たずに眠っています。
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