繁栄
第1章 より良い今日
過去のいずれの時代に比較しても現代は恵まれている。物質的には過去存在しなかったものがあふれ、それらは以前よりも安価に手に入るようになった。豊かさは幸福を増す事にもつながっている。人類の繁栄と大きな余剰は専門分化により生まれている。専門化することで自給自足の社会ではできない高度な製品、サービスを効率的に生み出し、物質的に恵まれた生活と、時間を生み出した。
第2章 集団的頭脳
人類は百万年にわたって手斧を自分で作り狩猟をしてきた。しかしアフリカで生まれた新しい人類はその後爆発的に全世界に広まった。遺伝的要素、地域的要素はあるにせよ、爆発的な発展に繋がったのは主に経済活動、交易に負うものが大きい。そして交易は人口密度が増えるほど活発になりテクノロジーの発展を促した。逆にタスマニア島のように孤立した、交易が発展せず人口が少ない場所では一度芽生えたテクノロジーが退行することもあった。人間の技術の発展は集団的頭脳によるものである。
第3章 徳の形成
交易は輸出側にも輸入側にも利益をもたらす。企業のあり方は以前とは変化しており、小規模の組織が増えてきている。経済の発展のためには法の整備が不可欠である。
第4章90億人を養う 一万年前以降の農耕
農耕文化は氷河期が終わった後、各地で萌芽が起こった。農耕は一人を養うために必要な土地面積を減らし、安定的な食料を供給し始めた。集落は規模が拡大可能になり、農耕で成功した者とそうで無い者てヒエラルキーが形成された。現代の農耕の大きなイノベーションは肥料の人口的な製造と、遺伝子組み換え作物である。肥料によりさらに農耕効率は高まったことで十分に多くの人口を養うだけの食料生産が可能になった。遺伝子組み換え技術により、作物は病気から強くなり、優れた栄養価を持つようになった。楽観的主義からみれば現代の人類はこうした技術の恩恵を歓迎すべきだ。
第5章 都市の勝利 5000年前以降の交易
交易は都市経済を発展させる。古代文明が栄えたティグリスやユーフラテス、インダスなどは交易の中心地であった。交易により相互に利益を得ることができるため、専門化が進み、経済が発展し、多くの人口を養う都市がいくつも芽生えた。開放市場は経済の発展を促すが、専制君主などによる搾取や、保護政策で停滞した都市も無数にあった。2008年には史上初めて都市人口が半分を上回るようになった。都市はチャンスの象徴であり、田舎暮らしよりも恵まれることが多い。現在の大都市も交易の中心地であり、大都市に人が集まる傾向は今後もしばらく止むことは無いだろう。
第6章 マルサスの罠を逃れる1200年以降の人口
中世の頃、分業化が進み、農業生産性が向上するにつれて人口は増えた。人口が増えると食料の生産が追いつかなくなりあるポイントで人口が減り、経済が停滞した、自給自足の性格が強くなっていた。近代のヨーロッパでは産業革命により、生産能力を人手以外のものから得ることができるようになった。現代では、人口は増え続けているが、出生率は下がる国がでてきている。経済的自由が得られると出生率は第一の転換点を迎え、下がる。人口抑制政策がとられる地域、時代もあったが、経済が発展すると出生率は同様に低下する。世界の人口は増え続けることは無く、90億人程度がピークとなる。さらに経済が発展すると第2の転換点を迎え、出生率は2程度に収束していくと考えられる。
第7章 奴隷の解放 1700年以降のエネルギー
人類は労働力を人から家畜、水力や風力、化石燃料へと変化させてきた。エネルギーの効率は後者に行くほど上がっている。化石燃料はいずれなくなるという話題が常に持ち上がるが、技術の進歩により未だに化石燃料の埋蔵量は新たな発見とともに増加している。バイオ燃料、再生可能エネルギー、つまりバイオエタノールや風力発電は多くの土地や材料、また、それを生み出すためのエネルギーを必要とし、効率的で無いばかりか自然破壊を引き起こすリスクがある。化石燃料を使い続け、いずれ新たなエネルギー源に交代させていくことがベストな道では無いか。
第8章 発明の発明 1800年以降の収穫逓増
完全な市場経済はパネート均衡に達するといわれているが、交易からなる経済は定常状態に達することは無い。経済はイノベーションによりどんどんと拡大している。イノベーションが起こる場所は時代により変遷している。しかし、多くのイノベーションは市場経済に支えられた小規模なイノベーターが進めてきた者で、政府主導のイノベーションはごく限られたものである事がほとんどである。イノベーションには無限の可能性があり、どうして悲観的になる必要があろうか。
第9章 転換期 1900年以降の悲観主義
どの時代においても、現代においても悲観主義は持ち上げられる。過去においても悲観主義は声高に唱えられていたが、現実にその悲観主義の予言通りとなることは無くテクノロジー、生活は進歩した。酸性雨や環境破壊、ウイルス、癌などは人類存亡の危機であるという警鐘は幾度と無くならされたものの、人類はこれらにより滅亡はしていない。むしろ対策を立て改善に向かっている事が多い。
第10章 現代の二大悲観主義 2010年以降のアフリカと気候
アフリカは現代の世界で、貧しい国々がある代表的な地域である。ODAは独裁者に搾取され、国を潤す事は無かった。しかしウガンダのように直実に成長した地域もある。困難は伴うだろうが、長期的にはアフリカが現在の先進国と同じように恵まれた生活はが送れる日が来る可能性もあるだろう。
地球の温暖化は多くの人々が気にかける所ではあるが、これまでの推定値が正しいという根拠には乏しい。また、たとえ温暖化が進んだとしても環境への影響は生態系、人類の生活に大きな影響を与えない範囲である可能性が高い。二酸化炭素排出量を甘受して、成長を進めていく一方で対処をしていくことで乗り越えられる可能性が高いのでは無いか。
第11章 カタラクシー 2100年に関する合理的な楽観主義
未来のことを予想するのは難しく著名な作家たちが想像した過去にとっての未来は現代とは異なる。テクノロジーの発達は想像もつかない方向に世界を動かしていく。どのような状況が訪れてもおかしくは無いが、あえて楽観的に素晴らしい未来を信じたい。
長い本なので章ごとの要約を書きとめながら読んだ。
人類の発展を支えてきた一番の源は交易による利益と、分業化が進んだことである。
市場経済の今後の行方を極めて楽観的な視点から述べている。
この本が書かれた2010年から6年たち、また世界の情勢は少しずつ変化したこともある。
また、楽観視の中には、現在の状況は厳しいが、いつかイノベーションが起きればきっと解決する、といったパターンの論じ方もみられるが、未知の技術が開発されることを予測すること、期待することがどれほど当てはまるかは不明である。
今後の事はだれにもわからない。
以前読んだ、2052と共通点もいくつかみられるように感じた。
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