君がオヤジになる前に(堀江貴文)

 

君がオヤジになる前に

君がオヤジになる前に

 

 2010年、堀江さんが38歳になる頃に書いた各年代へのメッセージ。25歳の君へ、と具体的に一人のケースを取り上げて、それぞれに対してのメッセージの集まり。もっとも、メッセージの内容は自分の考えはこうだ、という主張で、特にその人自身の目指したい方向性のようなファクターは考慮されていない。つまり、堀江さんが思う合理的な生き方について書かれている。

堀江さんといえばライブドアの社長としてITバブルの時代に名を馳せ、(当時の)近鉄バッファローズの買収や、フジテレビの買収を画策したことで世間に物議をかもした。その後証券取引法違反有価証券報告書虚偽記載)で逮捕、有罪判決を受けて刑務所に送られる。現在は釈放され、様々なビジネスの世界で活躍されている。

書籍の中での一番強いメッセージは、常識にとらわれず、合理的な判断で生きろ、そして思考停止に陥るなというもの。例として取り上げた仮想の人間に対して、自分だったらこうだ、というように仕事への価値観、結婚への価値観、効率性の追求などといった点からアドバイスを送る。日本の伝統的な価値観に対しても、合理的でない伝統に対してはかなり厳しく、アウトカムを最重要視した回答を提示する。日本の伝統が封建社会時代からの生活に基づいていることが多く生活が一変した現代にはそぐわないものも多い。その変化し続ける現代に生きる若者には共感する内容が多いように思う。ただ、twitterなどでの堀江さんの会話を側から見ていると常識的な考え方にやや厳しすぎる印象も感じる。常識にとらわれないところが一部にはよく受け、そうでないと批判的な人間も多く生んでしまうのだろう。

自分で思ったように行動してきたからか、あまり長期的に付き合いがある人は少ないとのこと。自分にとって有益にならない人付き合いはすぐにやめてしまう人生を送ってきた。しかし本書の中で、他人に寛容なリーダーの包容力という、自分がそれまで大切にしてこなかったものに対しての葛藤がうかがえる。最後にカイジなどで知られる漫画家の福本さんとの対談がとりあげられているが、その中の一節で包容力に関しての福本さんの考え方を聞き、目からウロコが落ちたような場面がある。最近の(2016年)堀江さんのSNSでの発言を見ていると少し以前に比べて軟化したような印象を受けることもあり、この数年で彼の考え方も少し変化したのだと思う。

自分に当てはめて考えると、やはり自分も若者として、本書に出てくる若者と同じような悩みを一部にはかかえている。ただ、考え方そのものは自分にとっての合理性を重要視する堀江さんと似たところがあると感じた。もっとも、結婚観や、コンプライアンスなどに関する考え方は自己肯定の要素も強く、全てには同意できない。共通部分としては、自分の自己価値を元に生きる事、そして思考を止めない事が大事なのだろう。ただ、堀江さんがリスクをとりつつ1つのプロジェクトをやりきること、生活上の細かなことも主にその大きな目標を達成するための価値判断に基づいていることは一人の読者として痛快に感じた。全員が堀江さんと同じ人間にはなれないしなる必要も無いが、このような価値観での生き方は見習うべきところがあるだろう。

 

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