VIXによるポートフォリオのリスクヘッジ

Finance

コロナ流行中にも関わらずこの数ヶ月株式市場は堅調に推移してきましたが、NASDAQ指数などは戻すどころか以前よりも遥かに高い水準に達しています。自分のポートフォリオを見ていると、値動きが以前よりも荒くなり、理想としているよりも”リスクが高い”ものになっていました。リスクが高い、というのは、値動きの標準偏差が大きいという意味で使っています。

ポートフォリオの構成も大きなドローダウンを食らう可能性も高いため、ヘッジの手段が必要なのでは、と思うようになってきました。

ただし、長期債の金利がかなり低い水準にあるため、あまり債券への分散を多くしたくないと考えています。他に代表的なヘッジ手段は、というと株式のショートやVIX指数を思いついたのですが、株式のショートはあまり使いたくないという思いもあり、VIXを使ったヘッジについて少し調べてみました。

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VIX:恐怖指数

VIXを算出しているCBOEのウェブサイトを見てみると、VIX指数は、米国株式市場のボラティリティに関連した指数とあります。S&P500のリアルタイムのコールとプットのオプションを参考に算出します。

CBOEのホワイトペーパー[2]やinvestopedia[3]によると、VIX指数は以下の式で計算されます。

右辺は難しいですが、左辺のσ(シグマ)は標準偏差を意味する文字です。VIX指数はこのσに従った値です。σ2が0.0643のときσ=0.2536…になります。このときVIX指数はσに100をかけて25.36になります。オプションに含まれる価格の情報から、市場がどの程度のボラティリティを見込んでいるのかを数値化するわけですね。

VIXは別名、恐怖指数と言われるように、投資家心理を反映し、株式市場の暴落と共に大きく上昇しやすいと言われています。2018年末、2020年3月の株式市場の下落に伴ってVIX指数は吹き上がりました。

コールスプレッドを使ったVIXによるヘッジ

オプションに関するこちらの記事[4]がとても参考になりました。

Portfolio Hedging using VIX Calls Explained | Online Option Trading Guide

VIXが低い時にヘッジのためにout-of-the-moneyでVIXのコールオプションを買ってプットオプションを売る、という内容が書いてあります。多少のコストを掛けることで、その後大きく市場が動いたとしても、ポートフォリオが安定化しそうです。

オプションを買う量は、株式とVIXの連動の程度を想定して決定するようです。

株式急落時のVIXの組入量

現実のVIXの投資は先物やオプションを利用するため、VIX指数と全く同じ値動きを実現する事は困難ですが、定量的にVIXの値動きを理解するために、大きな下落時、小さな下落時をいくつか例にとってVIXを組み入れたポートフォリオの値動きを見ていきます。

チャートでは、S&P500連動ETFのSPYを100%持っているのに比べて、VIXを5%, 10%, 20%, 30%ポートフォリオに混ぜてみた時にどの程度トータルリターンが変化するかを示しています。

2000年3月〜2002年10月:S&P500 -49%

2007年10月~2009年3月:S&P500 -56%

2020年2月~2020年3月:S&P500 -34%

2015年8月: S&P500 -14%

2015年12月〜2016年2月: S&P500 -13%

2018年1月〜2月: S&P500 -10%

2018年12月: S&P500 -16%

ITバブル崩壊のようなゆっくり長く続く下落相場ではVIXをかなり多く組み入れなければ下落を避けることはできないようですが、他の下落相場、特に短期間での下落相場でダメージを回避するためには10%程度組み込むことで下落を打ち消す事ができそうです。

VIX連動ETFを使うならどの程度の組入が妥当なのか?

先程の記事のようにオプションなどを使っていくのが望ましいのだと思いますが、個人投資家がやるにはかなり荷が重い作業です。個人投資家であればむしろVIX連動ETF(あるいはETN)を使ってヘッジするのが一般的でしょうか。今回は、VIX連動ETFのVXXを例にとって、どの程度ポートフォリオに入れていくのが良さそうなのかを検討してみます。

なお、今回はVIXをずっとロングし続けるというようなシミュレーションをしていますが、VIXを恒常的に組み込んだポートフォリオのことを検討したい訳ではありません。通常は株式が下がってVIXが吹き上がったところで一旦利確して、ポジションを持たない、あるいは、VIXインバースなどに手を出す事が多いと思われます。

バックテスト

まず、Portfolio Visualizer[5]を使ってバックテストを行ってみました。バックテストでは、S&P500連動ETFのVOO、長期債ETFのTLT、VIX連動ETFのVXXを組合わせたポートフォリオを検討します。それぞれのETFのリターンはこちら。

VXXはVIXに連動したETFですが、先物のコンタンゴがあるため、徐々に値下がりするという性質があります。このため、保有し続けるためのコストが発生するという商品でもあります。

逆に言えば、市場が堅調ならばVIXのインバースETNを持つという戦略も成り立つわけですが、2018年2月にあったVIXショックではVIXが急に吹き上がり、インバースETNが消滅するという自体に陥ってしまい、この戦略をとった人は損しました。

VXXは2019年は値下がりし続けましたが、2020年の市場の下落の際に約6倍の価格に跳ね上がりました。この急騰がどの程度株式の下落をヘッジしたかを検証していきます。

バックテストの結果はこちら

S&P500 ETF(VOO)をベンチマークとして、1. 長期債を40%組み込む、2. VXXを30%組み込む、3. 長期債20%、VXX10%を組み込む、という3パターンを比べてみました。2019年からのチャートを見てそれぞれの資産がどの程度寄与したかを考えます。

まず、長期債のみの組入は青のチャートです。2019年は堅調に値動きをして、2020年の暴落でもドローダウンはせいぜい8%でした。しかし、リターンは他のポートフォリオに負けました。

VXXのみを組み入れた場合が赤のチャートです。結果としてトータルリターンは一番良かったのですが、2019年のリターンはほぼ0で、2020年に株式が暴落した時に一気に値上がりしています。VXXを30%も入れると暴落には強くなりますが、株式のリターンをほぼ相殺してしまうほどのマイナス面も有るようです。

3つの資産を組み合わせた3つめの黄のチャートも安定する結果をもたらしました。株式以外を含むポートフォリオと合わせた時の値動きを考えるのも重要に思えるほど、安定しています。

2019年の株式市場はかなり好調だったことを考えると、VXXを30%も組み入れていると、株式リターンが低い他の年ではコンタンゴによる減価でむしろポートフォリオのリターンがマイナスになる可能性が高そうです。一方2020年のVXXの高騰はVXXのヘッジ効果としては十分すぎるくらいで、VXXの効果を過大評価する可能性があります。

分散の面からポートフォリオ探索を行う

自身のブログの機能を使って株式、長期債、金、VXXを使って最小分散を実現するポートフォリオを計算してみました。レイ・ダリオのオールウェザーにVXXを加えたようなポートフォリオですね。ポートフォリオ安定化の点ではVXXは大体5-10%程度が妥当な量に思われます。

結果は下記で再現できます。

リターンに与えるVXXの影響を考察する

VIX指数自体はその計算手法から、非常に長期の期待リターンは0%と言えそうです。一方で、VXXはコンタンゴの影響で期待リターンがマイナスになるはずです。現行のVXXは2018年に設定したもので、価格情報が長期で取れないため、同様の値動きをすると考えられるVIXYとVIX指数の比較を行って、VIX連動ETNの減価のペースを推定してみました。

正確な値は出せないのですが、エクセルで計算した印象ではおよそ年間に40%程度は減価していきそうです。

株式の平均的なリターンが年間に5-7%程度と考えると、おそらくポートフォリオにVXXを10-15%程度いれるとほぼ完全に株式のリターンを打ち消してしまうと考えられます。

VXXの値動きはVIXより幾分マイルドなので、VXXで完全に下落を防ぎつつ株式からのリターンを得るというのは難しいということでしょう。

よほどVIXが跳ね上がる自信があるのでなければ、この水準でVXXを保有するのはリターンの面からは勧められません。

ポートフォリオへの組入の検討

今回の分析とは別の話題ですが、2019年11月ごろにVXXオプションを買ったのですが、2020年2-3月の吹上げの途中で売却してしまい、損はしなかったもののもっとリターンを得られたなという思いも残りました。VIXの売却のタイミングの難しさを実感しました。

以上と今回の分析を踏まえて、VXXのポートフォリオの組入について、以下のように考えて、今月ロングポジションを組み入れてみました。

  • 組入は5%以下
  • 組入のタイミングは、株式市場が過熱してVIXが下がってきたと思われた時期
  • 売却のタイミング(VXXの価格)を予め決定する、そのためコールのショートを組み合わせて効率をあげることも検討

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