2020年下半期

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2020年下半期の振り返り

2020年の下半期のリターンは25.4%でした。税引き後の数値です。その間にS&P500は21.1%上昇しました。リターンについては、コロナショック後の猛烈な株高があった中で数%アウトパフォームできたので結果的には良い期間でした。

しかし、違う視点から考察します。元々の投資の指針としては、アセット分散を利用して多少のレバレッジを許容してリスクをS&P500よりは抑えてS&P500と同等程度かそれ以上のリターンを得ることです。この点から言うと、私のPFのリスクを日々の値動きから標準偏差を算出すると一年間当たりだと1SD=18.8%でした。一方でS&P500 ETFのVOOは16.22%でした(配当含まず)。参照しているオールウェザーPFは6ヶ月のリターンが6.24%、1SD=7.29%でした。

ポートフォリオのリスク管理

オールウェザーPFは相変わらずお互いのアセットが値動きを相殺して低いボラティリティを実現している事を考えると、私のPFは分散の観点からは当初の目標を達成できていない事になります。一方で、リターンではオールウェザーは振るいませんでした(絶対値としては十分なのですが)。この大きな原因としては、株式以外のアセットの不調にあるでしょう。ゴールドは9月に最高値をつけた後に失速しましたし、債券にあたっては長期金利がジリジリと上がったせいで大きな割合を占める長期債のリターンが振るわずリターンを押し下げました。

債券については、分散によるボラティリティ低下の効果は得られていましたが、結局リターンが悪いためポートフォリオのリターンにとってはマイナスでした。よく出てくるポートフォリオ理論でも、株も債券も期待リターンが正ならばある程度配分を決めるのも楽に思います。しかし、コロナショック後の低金利はインフレ率を下回り、実質金利としてはマイナスで、期待リターンがインフレ率を下回るため、債券を混ぜることによるボラティリティ低下効果よりもインパクトが強いリターンの低下効果があるのではないかと思い、結局2020年下半期も債券のロングポジションは増やしませんでした。

結果としてTLTなどの長期債は値下がりして、判断としては間違っていなかったかと思います。その代わり、VIXのロングポジションをオプションを使って持っていました。

VIXと株価の相関係数はおよそ-0.7〜-0.8程度でした。しかし、たまにVIXは値上がりするもののオプションの費用が高いため、VIXが下がったときになるべく安く仕込んでも結局利確すること無く、無駄にコストだけがでていきました。2020年2月の急落時の良いタイミングでVXXを持っていたのに売買のタイミングでチャンスを活かせなかった教訓を得たため、今回は閾値を設けて機械的に売却するつもりでしたが、そのトリガーには一度も引っかかること無く、半期でポートフォリオには-2%程度のインパクトでした。また、ポートフォリオの安定という点では幾分ボラティリティを下げる役割を果たしたのでしょうが、最終的に実らなかったという点ではPFのお荷物としてはお荷物でした。

リスクに対して、変動しやすさ=ボラティリティという評価軸を置くのではなく、安全域=ドローダウンという評価をするのであれば、コロナショック後も資産バリューを保っていた割安株を慎重に選ぶというやり方もできたかもしれません。正直自分でこのような個別株を選ぶ能力はありませんが、9月ごろにNASDAQがピークを迎えた後に市場の主役になったのはこうした一部の割安株(とビットコイン)だったようにも思うため、イナゴ投資でも何でも要素に取り入れるという手法もあったかもしれません。

主なイベント

リスクに関して長々と書いたものの、下半期はポートフォリオはあまりいじってはいません。マメではないので、各時点でのポートフォリオのアセット配分が正確にはわかりませんが、前回上半期を振り返った時の通り、7-11月くらいまでは株式55-60%, 債券10-15%, ゴールド20-25%, VIX2-5%程度のポートフォリオを組んで、オプションでレバレッジをかけつつ時々エクスポージャの調節をしていました。

9月頃になり、NASDAQがピークを迎え、一旦株の値上がりが止まりました。ポートフォリオも9-10月は停滞し、この期間ほぼリターンは0でした。

11月になり、アメリカでは大統領選挙が行われ、事前の調査通り民主党候補が選挙に勝利して、一部の出遅れ銘柄がジリジリと上がって来たように思っていたところ、11月9日に思わぬニュースが飛び込んできました。

コロナワクチン相場

結局2020年の下半期は11月9日に報道された、ファイザーによる新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの臨床試験の中間報告に始まるイベント・ドリブンなポートフォリオ組み換えのインパクトに比べれば自分のポートフォリオには大きなイベントはありませんでした。

11月9日にニュース速報が流れたその夜に、PLTR, SQ, MMM, BRK.B, FCAU, AXPと債券、ゴールドの一部を売却して、ポートフォリオの約30%分でレバレッジドETFのDFEN, FAS, DRNに投資しました。もはや自分の指針のルールをぶち破る大きな組み換えでしたが、これらはコロナ禍の収束が見えた頃に資金を移動させる候補のセクターでした。

これは、ニュース速報の時点の情報から、ワクチンが新型コロナの流行に対してゲームチェンジャーになる可能性が非常に高いと感じたための判断です。当初は医者からもワクチンの効果に意見も出ていましたが、薬剤の承認に関わるような臨床試験のデザインのデータはWebに公開されていますし、mRNAワクチンの理論、基礎医学的なデータはその時点で論文を見れば分かります。ここに情報のギャップを感じたため、報道の日にこれらのセクターは10%近く上昇したものの資金を投じました。その後、モデルナ、アストラゼネカ、Johnson and Johnsonなどのワクチンのニュースや、実際に接種が開始された後のコホートの追跡を見るに、概ねワクチンの効果は当初の期待通りと言えそうです。変異株というジョーカーはいるものの、先進国では2021年中にある程度の収束が見られると期待しています。

これらのレバレッジドETFは年末までにさらに値上がりしてポートフォリオに+7-8%程度のインパクトをもたらしました。DRNについては、出遅れているものの確実な需要がある銘柄群、FASは景気回復の期待が含むであろう金利上昇で利益水準の底上げが期待される銘柄群、DRNも出遅れている不動産関連のリバーサルへの期待、といった理由です。

代償としては自分のルールからかなり逸脱したアセット配分にしたせいで、取ったリスクをカバーするヘッジができていません。ポートフォリオのボラティリティはこの日を境にS&P500を超えています。株式80%、債券3%、ゴールド14%、VIX3%というようなエクスポージャになっていますが、レバレッジ分を考慮すると理論的に取ることができる最大限のリスクを取っていることになります。

出口戦略としては2021年中盤頃には売り抜けたいと考えています。これは、おそらくコロナ禍に目処が付き2022年以降の金利政策を盛り込んだ金利水準への変化がこの頃には起きて、実質金利もプラス圏に行くのでは、といった期待からです。しかし、2月現在でも30年債の実質金利はプラスになりそうですし、2月の急激な金利上昇を見るに、もう少し早めの売却が必要になるかもしれません。

その他
7月以降、個別株としては、GOOG、CVS、WBA、INTC、BABA、三菱地所を購入。ポートフォリオの構成はDFEN(13%)>FAS>BABA>DRN>VWO>GOOG>UNH>VDC>ソフトバンク>VT(2.5%)>…といった顔ぶれになりました。下のリターンはTWRです。

なお、リターンとしては良いのですが、値動きとしては荒く、自分が理想とするポートフォリオにはなっていません。リスクをとってβでリターンを得る戦略になっているため、あまり人に勧められる戦略ではありません。βもコロナワクチン以前では0.68程度のPFでしたが、レバレッジドETF購入後、β=1.27と市場リスクへの暴露が増えています。リスクはケリー基準などを参考にしていますが、これは取りうるリスクの限界だと思います。いつ売却するかのチキンレースが2021年のテーマになりそうです。

2021年の見込み方針

2021年は、コロナからどう実体経済が回復していくかがテーマになると思っています。株は調整リスクや金利によって左右される可能性がありますが、年内はFRBは緩和を続けるでしょうしアジア新興国諸国のGDP回復はめざましく、やはり持っていたいと思います。一部の実態からかけ離れたハイパーグロースを避けてポジションをとりつつ、夏頃までには50-60%程度まで減らすつもりです。債券は長期債の値下がりを待つ方針で、できれば10年債金利が10年BEIを上回る程度まで回復してからポジションを取りたいところです。そうでなければコストを払ってもコモディティのロングポジションでも良いように思うためです。ゴールドは2020年9月をピークに徐々に下がってはいます。金利の上昇の影響が強いのかとは思いますが、ポートフォリオの10-15%程度のエクスポージャを続ける方針です。なにせ値上がりしまくっているビットコインは今から買いづらいし口座が分散して管理が面倒という理由もあります。

イベントごととしては、コロナからの回復に伴う各セクターの売り上げの変化、イールドカーブの変化、米中対立の状況、東南アジア諸国での代理戦争、などなど注目するところはあります。しかし、こうしたことに機敏に対応するのはしんどいので、定期的な買付は、防御力の高そうな企業か、長期的にEPSを伸ばしてくれそうなところにするつもりです。

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