敗者のゲーム(チャールズ・エリス)

 

敗者のゲーム〈原著第6版〉

敗者のゲーム〈原著第6版〉

 

 

機関投資家のプロ投資家とアマチュアである個人投資家を比較すると、スポーツ選手のプロとアマで見られるような関係がでてくる。つまり、プロはウィナーを決めるような勝てる戦略をとることで成果をあげる。一方でアマチュアが負ける原因はミスであり、ミスを少なくする事が勝つ秘訣である。

金融の世界にはインデックス投資という手法がある。突出した成績が挙げられるわけではないが、インデックス投資よりも素晴らしい成績をあげられるファンドは全体の20〜30%しかない。個人投資家はプロに勝つことを画策するより、インデックスファンドによる株式の長期投資を主軸にするのが良い。また投資のプランを考えるときに適切な資産配分、投資家としてのニーズを初めに良く検討する必要がある。
投資本で数十年読み継がれているような本は一貫して安定した成績をあげることを重要視しているものが多い。シカゴ学派のように分析的に投資を分析していくと個人投資家としてとるべき選択は自ずと決まってくるのだろうか。

◯市場に勝つには
現代の市場の取引の90%は機関投資家によるものである。機関投資家は長い年月をかけて情報を良く分析して効率的な取引をするようになった。そういった素晴らしいプレイヤーの総体がS&P500などのインデックスである。投資ファンドの目的は顧客の収益の確保と自らの収益の追求である。しかし、アクティブに平均であるインデックスに勝つことは機関投資家にも難しく、また、短期収益志向が邪魔をする、また、パッシブでは勝つことは難しい。

市場に勝つ方法は、①市場タイミング、②将来性ある銘柄の発掘、③投資戦略の工夫、④セクターやグループごとの長期的な収益の分析などを通じて、市場のミスを見つけ出すより他ない。

◯平均への回帰と長期投資
市場に勝つのが目標とは言っても、効率化され、揺れ動くマーケットに勝つのは難しく、一般には企業収益や配当の成長に重きをおく方が長期的には報われる。一度決めた方針を動かさず、忍耐強く待たなくてはならない。マーケットが悲観的になり暴落したとしても損益を確定してはいけない。また、情報戦ではやはりプロに勝つのは難しく、個人投資家に楽なのはインデックス投資であり、国際分散や、ドルコスト平均法でリスクを分散させるのが良い。
一般に株式はリスクが高いと言われる。短期的な投資の収益を分析したときに分散が大きいためである。債券などでは安定した収益が得られるが、期待収益は株式に及ばない。しかしリスクは長期投資により回避することが可能である。「平均への回帰」の法則から、一時的に下がっていた収益はいずれ平均値に戻っていく。株式の期待収益も数十年の運用を行うことで平均値に近づき分散が少なくなる、つまり、リスクを減らすことが可能となる。

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Ref: Viewing Stock Market Risk Over The Long Run — My Money Blog

(長期的に保有する事で資産の変動リスクを減らす事ができる。)

◯リスクの分析
平均収益率を考えるときには①無リスク収益率、②インフレによる相殺、③リスクプレミアムを合わせて考える必要がある。
リスクとは、「特定の事象が起こる確率が知られているときに予想される必要支払額」である。長期投資で問題になるのはインフレと、不要な感情によるリスクとなる。個別の投資先については価格、金利、事業自体、会社の倒産といったリスクを考えなくてはいけない。また、長期的にインフレ率や株式市場全体・セクター・株式自体の値上がりを含んだリスク分析から収益率を検討する必要がある。投資家自身のリスクとしては回避できないマーケットリスク、そして個別銘柄リスクと株式グループリスクとがあるがこの2つに関しては分散により解消される。
これらのリスクを定量して一定のリスクの元で最大限のリターンを目指すポートフォリオを組むことをかんがえ、運用の基本方針を定めて、書き下すべきである。

◯ライフプランに応じた基本方針
投資家は自らの技術、資産状況、リスク許容度に応じて投資プログラムを計画して、長期的なリターンを目指す。資産配分はどうするか?必要な資金が必要なときに確保できるような投資先の成長性・安全性・収入を考慮する。幅広い分散を行いリスクオフを行う。一度決めた方針を曲げない。

基本方針作るときにはまず資産配分の比率を勘案する。株式と債券の比率は?また、成長株vs割安株、大型株vs小型株、国内株vs海外株などに分ける。また、アクティブとパッシブの比率も定める。しかしアクティブな戦略はコストがかかるため難しい。

 

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Ref: Choosing An Asset Allocation, Step 1: Deciding On The Stocks/Bonds Ratio — My Money Blog

(上記は債券と株式の保有割合を変えた時のリターンとリスク(=標準偏差)のプロット。上記の平均への回帰を用いるとこのグラフでのリスクは実は回帰可能、つまり株式保有割合を増やす方が有利、という事になる)

個人投資家にはライフプランがあり、ライフプランに応じた投資を考えていくべきである。引退後の生活はどうするか、遺産はどの程度残したいか、などである。401k(確定拠出年金)などの利用は積極的にしていくことも収益率をあげる秘訣になる。

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