2019年の振り返りと2020年のアセットアロケーション

Finance

結論から書くと特に投資の方針は変更せず、分散投資でリスクを抑えめにしつつレバレッジをかけて行こうと思います。2019年の特に印象に残ったことの振り返りと、2020年の方針をまとめます。

スポンサーリンク

2019年の振り返り

2019年の自分のポートフォリオの値動きはこんな感じでした。リターンの計算はキャッシュフローを覗いたポートフォリオの日次リターンをもとにチャートをプロットしています。

前半戦

2019年はそもそも始まりが最悪でした。2018年末に株価が一気に下落したので、ピーク時から大幅なマイナスで始まった年となりましたが、今思えば絶好の買い場でもありました。結局買い増しのタイミングを逃し前半はS&P500にも劣後。

そして、以前から手を付けていた金、金鉱株(EGO)のウェイトが多くかなり金相場に左右されました。現物の金よりも5-7倍程度値動きが激しいEGOは最大でポートフォリオの10%程度まで増やしており、一銘柄でポートフォリオの値動きの半分程度を占めていたように思います。

その後、金、金鉱株が一気に値上がったところで8月にEGOはすべて手仕舞いました。今思えばこれが今年前半の全てでした。

後半戦

後半は、以前から試したかった海外ETFオプションを使ったレバレッジドオールウェザーポートフォリオのような分散ポートフォリオを目指して少しずつオプションを増やしています。

オプションはInteractive Brokersで買い付けていますが、やり方によっては大火傷を負いかねないので他人にはあまりオススメしません。私はブルスプレッド(コールオプション(株式を買う権利が与えられるオプション)をロング・プットする)を作り、限られた範囲での値動きで利益を得るような、レバレッジETFと似たような使い方をしています。

金利・時間のコストがかかるので株式で言えばβプレミアム、債券でいえばタームプレミアムを取りに行っていることになると思います。結果的にはレバレッジETFを保有するのと大差ない上に売買でロスをしているようにも思います。

最終的に本年の年始のアセットアロケーションが以下のようになりました。オプション部分を含めた各アセットへのエクスポージャーも示します。レバレッジが2倍近くかかっている状態で、分散により株式よりも劣る期待リターンを補っている状況です。オールウェザーポートフォリオはリーマンショックも15%程度のドローダウンで乗り越えていますが、今のポートフォリオは株式との相関がそれよりも強く、ケリー基準的に考えてもこれ以上のレバレッジは危険と考えています。

株式部分はインデックス(VT, VWO, VEA, IJR, QQQ)、セクターETF(VHT、VDC)、アロケーションが高い個別株はBABA、UNH、FCAU、AXP、RDS.Bです。債券部分はAGG、IAGG、TIP、TLT。オルタナティブはほとんどゴールドです。

2020年のアロケーション

各アセットの見通し

正直、全くわかりません。

というかリターンを予測して当てるのは不可能だと思っています。以前分析したときも、リターンは過去の値動きとの相関からの予測が外れやすく、最大のシャープレシオを実現するポートフォリオを組むという事自体が困難だと実感していました。

もちろん、1年をルックバック期間としたモメンタムは株式におけるファクターとしては有意なものだと考えられていますが、他のアセットについては適応は難しいと思います。

一方で、分散を最小化するアロケーションは比較的一貫性があり、大体、オールウェザーポートフォリオ(株30%、債券55%、金・コモディティ15%)のようなアロケーションでしたので、リスクをコントロールするという視点に立ち、このような分散を目指していました。

それぞれのアセットについての予測はわかりませんが、ある程度はリターンの確率分布を見積もらないとアロケーションができません。

2020年の米国はEPSの伸びの見通しも明るく、それに従い2019年は株価が上がっていますが、年始から米国とイランが衝突したりと国際情勢がかなりきな臭い事になっています。去年も米中摩擦で株価が落ちたりはしましたが、今年は米国の選挙の年なのでトランプ側も大きな行動にはでないのではないかと考えています。どうしようもない外的要因があったり、シクリカルの景気の戻しが遅れると下がる可能性もあるのではと考えています。新興国も年末に少し上げ、経済成長が順調であれば良いですがわかりません。

債券については主に米国債のポジションとしていますが、長期金利はリーマン後より高いもののまだまだ低水準。景気が堅調であれば政策金利がこれ以上下がることはなく、金利は上がるだろうと思いますが、株式が下がれば負の相関は生きて一時的に債券価格が上がるかと考えています。逆イールドも一時ありましたが、イールドカーブはスティープになりタームプレミアムは生きています。TLTの期待リターンは2.5-3%/年ではあるものの下がる可能性も大きいかと思い、オールウェザーポートフォリオほどに債券比率は高められていません。

もっとも、このような考え方自体がリターンを下げる原因になる可能性があるため、しっかりと債券割合を増やしたほうが良いのかもしれません。(オールウェザーの比率でヒストリカルなデータをもとにケリー基準に沿った最大のレバレッジを計算すると400%のレバレッジになりますが、そこまでやる勇気がない、というのも株式の比率を増やした一因です。)

金は無相関なアセットかつインフレ耐性があるためキャッシュよりは良いだろうという考えで現在の割合になっています。年初時点で1600ドル/oz程度まで上がってきていますがここを超えるとどこまで上がるかわかりません。株式が予想通り堅調に推移するならば金の価格もまた落ち着いてくる(下がる)のではないかと思います。

基本的に全てが同時に上ることは期待していないので、対立するリターンが期待されるアセットの将来の確率分布を自分なりに考えて現在のアロケーションにしています。

日々のキャッシュフローや生活資金は全く別に管理しているので、積み立てながら可能な範囲で運用をしていきたいと思います。急激に金利があがりつられて株価が下落したのに、金の価格は思ったより上がらない、なんてことがあると、大きな痛手になりますが、生暖かい目で見ていてください。

2020年の計画

よほどの値動きが無ければ今の比率を維持しようと思います。株式も増やしにくく、値ごろな個別株があったときにリバランスついでにたまに買い付けられれば良いかなと思います。

ポートフォリオが複雑になり管理も煩雑になっていますが、個別株を丹念にスクリーニングしたりはしないので、あくまで本業優先にして、今年はサイドプロジェクトや個人的な試験などにも取り組んでいきたい所存です。

コメント

  1. レバレッジリーマン より:

    いつも大変勉強になります。
    個人的に、プルスプレッドによりレバレッジをかける手法にとても興味を持っております。といいますのも、先生の以前の記事にも分析されておられましたが、SPXLなどは日変動による減価が年間5-10%と大きく、現実的には長期保有に耐えないかと存じます。
    そこで、減価しないレバレッジポートフォリオを作ろうと思うと、やはりオプションを使うしかないという結論に至り、勉強しているところです。
    ただ、いかんせん難易度が高く、どのようにすれば、狙ったレバレッジのカスタムetfが作れるのか、もしも良ければ記事にして頂けたりするとめちゃくちゃ嬉しく存じます。

    何卒、今後もお体に気をつけてお過ごし下さいませ。

    • drkernel drkernel より:

      コメントありがとうございます。

      オプション使ったブルスプレッドに興味を持っていただきありがとうございます。自分的にはオプションはかなり手間がかかるので、レバETFとどちらが良いのかはあまり結論がでていない状況です。

      例えば、3月に株価が下がったときに株式オプションは一気にOut of the Money(OTM)になりタダ同然になりました。こうなるとオプションを買い増さないとリバーサルをとれないためポートフォリオの管理が大変でした。今は原資産の価格に応じたリスクを定量化するようにしています。オプション価格の変動はδ(デルタ)で表されるように、原資産の価格に対して変動していきます。なので私はスプレッドシートでオプション価格を取得しながらデルタを近似的に計算(今はLogistic関数に近似させてます)して、ポートフォリオの相対的なリスクを定量化するようにしています。

      ここの手法を書くのは厳密なファイナンスのクオンツの方々にバカにされそうなので記事にまでするのははばかられてしまい二の足を踏んでいる状況です。いずれにせよ、ブルスプレッドでレバレッジETFを模倣するための労力をかけるくらいなら素直にレバレッジETFを購入してもよいのでは、と思います。日変動による減価とはおっしゃいますが、例えばSPXLの長期のリターンはSPYの3倍になるわけではなく、相場によってはそれ以上にも以下にもなり得ます。オプションもスプレッドを作ることでいくらかは軽減されるものの金利コスト・時間コストはかかりますしbid-askのスプレッドもバカになりません。また、外国口座であれば(サクソバンクは国内口座で海外オプション取引ができますが)雑所得による税金が課されるということも考慮が必要になると思います。御自身にとってベストな方法が見つかると良いですね。

  2. レバレッジリーマン より:

    カーネル先生

    大変ご丁寧なお返事、ありがとうございます。
    よく分かりました。
    さすがは先生、デルタのフィッティングまでなさってリスクの定量化をされているのですね。確かにその方法であれば、理論上オプションを使ったリスクパリティ戦略などが組めそうです。勉強になりました。

    大変恐れ入りますが、もう少しだけ、先生のご見識からコメントを頂けますと大変ありがたく存じます。
    実はその後、サクソバンクにてオプションETFを使い、先物を合成することで減価しないレバレッジ個別ETFを作るということをしております(普通に同限月、同価格でコール買い、プット売りをする手法です)。これで例えば3-12ヶ月毎のロールオーバーならば、リバランスもその頻度になるので、減価はほぼ回避できることにはなります(一方で、一発ロスカットのリスクも負うことになりますが)。

    個人的には、合成先物であれば、過去の現物データ(と短期金利、配当利回り、あとはサクソバンクの売買手数料、オーバーナイト持ち越し手数料、ビッドアスクスプレッド)から理論価格との乖離の計算が比較的簡単にでき、年間およそ0.5-1%程度のコストでレバレッジETFの組成が可能とわかったので、しばらくこれでいってみようと思っているところです。
    ブルスプレッドは先生のコメントの通り、最適なロールオーバー限月やコストなどの計算が複雑で、金融素人の私にはちょっと手に負えなさそうなのと、さらに、長期投資の収益そのもののシミュレーションもややこしく、収益予想が建てられない点で、ちょっと遠目からみています(特に時間によるオプションの収束の計算)。

    先生はこのあたりのことはご存知の上で、リスク軽減のためにブルスプレッドを採用されたのかなと想像致しました。もしよければ、合成先物について、どのように思われるか(ブルスプレッドに軍配を挙げられた理由やリスクなど)、簡単にで構いませんのでご教授頂けませんでしょうか。
    お時間のある時で構いませんので、お返事くださいますと大変ありがたく存じます。

    • drkernel drkernel より:

      レバレッジリーマン様

      参考になれば幸いです。
      オプションの戦略について大変精密に検討をされているのですね。
      残念ながら私も金融のプロという訳ではないため、あまり正確なコメントができる自信はないのですが、、、。

      オプションの売りと買いを組み合わせることで擬似的な先物を作るという主旨、理解しました。
      0.5-1.0%のコストでできるのであれば先物よりは効率が良さそうですね。
      ただ、実は私はあまりこうした戦略は考えたことはありませんでした。

      というのも、オプションを利用している目的がおっしゃる通りで、「コストを支払ってテールリスクを避ける」という事そのものだからです。
      オプションの価格には時間、金利、分配金、ボラティリティ、原資産との価格差など多くの要素が絡み合うため実際にあまり厳密な試算はできておりません。
      このため、厳密なシミュレーションの元でブルスプレッドと、レバレッジETF・先物・合成先物を比較して判断をしたわけでは無いことをご承知ください。ただ、ロスカットという精神的にも大きなストレスが掛かる状況を避けたかったということです。

      一応、スプレッドを選択した中で、参考にした意見もいくつかあります。
      ・行動経済学(確かリチャード・セイラーの著書だったはず)では、賭け事のオッズは必ずしも実現確率と一致しない。(きっとオプション価格に歪みがある。)
      ・テールリスクに詳しそうなニコラス・タレブらの主張として、テールリスクは過小評価されがち。
      ・Kappa氏の著書やオプション戦略の論文などで、カバードコールやブルスプレッドではシャープレシオは少し高くなるという意見がある。(ITMのコールは過剰評価されていたかもしれない。)
      これらから考えて、あまり強気になりすぎないことと、自分なりに考えて売りを組み合わせる事は長期的にリターンを向上する可能性がある、と考えています。ポートフォリオもぐちゃぐちゃなのですが、同限月のスプレッドだけでなく、LEAPSのコール買いに対して近い満期日のコール売りをおいたりダイアゴナルスプレッドを試したりもしていますが、試行錯誤中です。

  3. レバレッジリーマン より:

    カーネル先生

    お返事、ありがとうございました。
    「文を読んだだけで」→もし私のことであれば、さすが先生、正解です。

    オプションは全く詳しくありませんので、先生に頂いたコメントをもとに数日調べ物をしており、お返事が遅くなりました。
    オプション売りにつきましては、KAPPA氏の著書の挙げられているカバードコール、プット売り、ブルスプレッドなどの論文のデータは大変参考になりますね。どうやら、IVがHVよりも大きいことがオプション売りの基本的なアルファということのようですね。

    また、オプション買いについては、タレブらの言う通り、市場はテールリスクを過小評価しているため、バーベル戦略などが優位性をもつ(far OTMオプションは割安)ということなのでしょうね。(一方で、タレブらのファンドの長期成績や、バーベル戦略の過去検証をした論文はgoogle scholarベースでは見つけられませんでしたので、本当に優位なのかは、ぜひ知りたいとは思いました。もっとも、仮に経済的には優位でなくとも、先生の仰るとおり、心理的安心(や熟眠?笑)を買えるのであれば安いプレミアム料かもしれませんね。)

    確かに、このあたりの知見を組み合わせるとブルスプレッドは長期的に有効な気が致しました。大変ありがとうございます。
    さらに、オプション価格計算の中で、特にボラティリティの変動による価格の変化(ベガ)がうまくポートフォリオにおいてリスクを計算できず、不気味でしたので、これをオプション買いとある程度相殺できるという意味でもブルスプレッドは魅力を感じました。
    (とはいえ、結局プット売り、カバードコールがリスクを軽減するのは過去の「エビデンス」的に硬そうですので、自分で計算しなくても、レバレッジ1.5~2倍程度のシンプルなATMのネイキッドプット売りであれば効率もよく、ドローダウンも軽減できる、ということなのでしょうけどもね)

    個人的には、シャープレシオ向上のための、ATM付近のプット売り(もしくは、これまで通りの合成先物)+熟眠のための20~30%のfar OTMプット買いという戦略がみえてきました。
    しばらく考えながらやってみようと存じます。
    ありがとうございました。
    今後も、記事を楽しみにしております!