時代ごとのファクターからレバレッジPFの強み・弱みを考える

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前回記事で紹介した、金利コストを考慮したレバレッジドPFの成績は私達の甘い見通しを見事に打ち砕いて来ました。レバレッジを2.4倍もかけているのにたった数%のリスクプレミアムしかもらえないのでは、と思い週末を待たずに売却してしまった方もいるかも知れません。

【2019年2月版】レバレッジPFの超長期のシミュレーション成績を見てみる
前回までの記事で1950年以降のS&P500ファンド、債券ファンド、そしてそれらを使ったレバレッジファンドのデータを揃えることができました。これらを使ってROKOHOUSE式可変レバレッジドPFの超長期成績を見ていきます。 当...

 

しかし、せっかちな方も少し待ってください。戦略なき行動こそが真に慎むべきものです。
冷静になって戦況を読みましょう。

前回の記事で紹介したレバレッジドPF(以下LPF)暗黒の年代1965からの約20年間と、相場が大きく動いた瞬間を見ていきましょう。

 

戦後間もない 1950-1965年

1950-65年代のアメリカは比較的好景気でした。特に朝鮮戦争後からアメリカはどんどんと成長していきます。実はこの頃はLPFとS&P500のリターンがほぼ同じになっています。

 

青の線のLPF・中リスクでは3倍株式ファンドを35%、つまり105%分程度アロケーションしています。この頃は債券利率は3-4%程度(10年債では)で安定して推移しており、利下げによる価格上昇などもあまり見られなかったため、債券のリターンは年間数%と低迷していました。(というか安定していた、と取るべきでしょうか。)

 

そのためか、値動きの殆どは株式によるものです。一方で、こんな解釈もできます。
株式の上昇がある程度見られているときは3-4%程度の金利は超過リターンと相殺できる。ただ、ドローダウンについてはやはりLPFの方が全体的に大きくなってしまうようです。この頃は債券と株式の負の相関がそれほど強く見られなかった。という説もあります。ただ、この時代のドローダウンはせいぜい20-25%程度で、その後の時代に比べれば大したことありません。

 

株債券のポートフォリオは見事にドローダウンが少なくゆっくり右肩上がりを描いていますが、リスク資産に投資する割合が少ない分、リターンも控え目です。

  SP500 6:4 portfolio LPF_High LPF_mid LPF_low
Annualized Return 16.3 10.9 15.3 13.9 12.6
Annualized Standard Deviation 12.1 7.67 17 15 13.1
Worst Drawdown 22.2 13.2 27.2 23.7 20.1
Annualized Sharpe Ratio (Rf=0%) 1.35 1.42 0.897 0.927 0.962
Sortino Ratio (MAR = 0%) 0.696 0.74 0.429 0.44 0.455

この15年間は株式のリターンは16.3%/年でした。一方で最大のドローダウンはたったの22%です。かなり好景気だったことがわかりますね。LPFのリターンの上乗せ効果はほとんどありませんでした。リスクを取らずに株式の割合が少ないとその分だけリターンも低下しています。

 

レバレッジドPFに投資したら後悔していた1965-1985年

 

ここが一番の問題となるところです。上のチャートと比べると明らかですがそもそも株式の投資成績が前に比べると悪い事に気づきます。1965年から1985年までの20年間で4.4倍です。とはいえ、インフレ調整すると更に実質リターンは低いため、報われなかった時代です。

 

1950年代に景気拡大とともに実はShiller PE (CAPE)は徐々に上昇を続けていました。1965年時点でのCAPEは23です。CAPEが高い時、その後の数年に渡るリターンは低迷することが知られています。1965年にそれまでの株式リターンを見て一攫千金を夢見て投資を初めた投資家は散々な目にあったはずです。(でもWarren BuffetがBerkshire Hathawayを買収したのもこの頃なので、人によりけり、なのでしょうが。)

 

ちなみに2018年現在のCAPEは33です。CAPEによるリターン低下を信じるのであれば、米国株自体の期待リターンを下げたほうが良いのかもしれません。この、「株式のリターン低下」はLPFの魅力を下げる要因です。

Shiller PE Ratio
Shiller PE Ratio chart, historic, and current data. Current Shiller PE Ratio is 29.90, a change of +0.26 from previous market close.

 

ところで、株式のリターンが悪かったからと言ってLPFのリターンが株式に劣る訳がありません。だってその時はS&P500だって酷いリターンなはず。そもそも株式自体は1974年に4割程度暴落していますが、1970年代後半は株式はそんなに暴落していません。

 

ところで、1974年の金融危機は日本でも有名な石油ショックですね。このときは石油を中心としたコモディティの価格が一気に上がっています。LPFではこの時6割近く下がってしまっています。この時もインフレの懸念などもあり、長期債の利率は上昇していました。

 

インフレによる利率上昇のときは債券は株式の下落をカバーしてくれない、という可能性が考えられます。このときは現物資産に投資しているのが正解でした。

 

その後LPFは回復し切ることもなく82年ごろまで下落し続けます。悪夢です。これは先程も触れましたが、2つの要因が考えられます。

 

一つは利上げがこの頃までは続いていたこと。80年代前半まで利率は上昇し続け10%以上にもなっています。これにより長期債券の下落→レバレッジド債券は消滅しかかるくらい暴落していたはずです。これがLPFの成績を株式から更に引き下げました。

 

もう一つは、レバレッジ分の金利負担が大きかったこと。今回のシミュレーションでは金利負担は短期債で計算しているため、イールドカーブが逆転しない限りは債券のリターンの中の金利収入>金利負担となるため債券リターン自体にあまり金利支払いは影響しません。ただ、あまりにも大きな金利負担は低迷する株式のリターンの中で、レバレッジド株式ファンドのリターンを押し下げます。結果としてこの時期のLPFは最悪の時期を過ごしました。

 

・長期金利上昇時の長期債券への投資は控える
・株式の期待リターン<金利負担の時のレバレッジ株式ファンドは旨味が少ない。

 

とりあえずこの時期のデータから読み取れることはそんなことでしょうか。

  SP500 6:4 portfolio LPF_High LPF_mid LPF_low
Annualized Return 7.69 8.12 1.28 2.58 3.81
Annualized Standard Deviation 14.8 9.91 22.6 20.2 17.7
Worst Drawdown 42.7 25.7 62.3 56.2 49.4
Annualized Sharpe Ratio (Rf=0%) 0.52 0.82 0.0565 0.128 0.215
Sortino Ratio (MAR = 0%) 0.276 0.443 0.0749 0.103 0.139

20年間の年率リターンがマイナスってそりゃ無いよな、、、

 

ところで、株債券のリターンは今回はS&P500とほぼ同じで、リスクを減らすことに成功しています。あまり長期でない債券であれば、利上げによる値下げ圧力に耐えて結果的にプラスのリターンになっていました。おまけに債券の表面利率が高く、それなりのリターンを生み出しています。もっとも、この時代のリスクフリーレートは高いので株式投資でも大して儲からなかった上にLPFに投資していたらどん底です。

 

逆襲の1985年から2018年

「もうダメだ、米国株は終わった」、「俺たちは夢破れた、もう株式投資なんてしない」と皆が思った頃、先程のCAPEはどん底まで下がりました。1982-83年のCAPEは8です。1965年からCAPEは下がり続け、底入れしていました。ここから米国株の快進撃が始まります。

 

ただ、ここでの話の主役は株式ではなく、債券です。この時期のLPFのリターンは株式を遥かに超えています。株式だけのリターンではLPFはここまでS&P500をアウトパフォームできません。アウトパフォームの要因は2つ、債券のリターンが良かったことと、株式債券の負の相関によりLPFがS&P500よりもリスクを回避できたことです。

 

1980年代を境目にして利率が低下していったため、債券のリターンは1980年代以降絶好調でした。このことがLPFのみならず、株債券ポートフォリオのリターンをお仕上げています。どん底まで沈んでいたレバレッジ債券ファンドもこの利下げの影響により上昇していました。利率が上がりきったときこそ長期債は買い時、なのかもしれません。

 

また、ドローダウンについても、これまでLPFのドローダウンはほぼS&P500と変わらなかったことにお気づきでしょうか。1994年もちょっとしたドローダウンに過剰に反応しています。

 

ただ、2000年は違います。ITバブルで上がりすぎた株式がその後2年に渡り値下がっていくのが、ここは債券がきっちり仕事をしてくれます。S&P500が50%程度下がったのに対して、LPFは30%程度のドローダウンで済みました。この頃5-6%まで上昇していた金利が一気に下がったことで長期債券が上昇したからですね。

 

債券買うなら利率が十分上がってから!というのが骨身にしみます。リーマンショックでの値下がりも同様の理由により、LPFの損失は株式と同程度ですみました。

 

ここで気になるのは、2019-20年ごろに予測されているとおりにリセッションが起こった場合、現在の債券は株式下落のクッションになるのか?ということです。私はおそらく不十分だと思います。金利が下がったとしても3%程度の長期金利ではカバーしきれない可能性があると思います。米国株に頼り切った投資手法を見直すか、その他のヘッジの方法を考える時が迫っているのかもしれません。

 

さて、各指標ですが、

  SP500 6:4 portfolio LPF_High LPF_mid LPF_low
Annualized Return 10.9 9.44 17 15.7 14.3
Annualized Standard Deviation 14.8 9.09 21.3 18.9 16.4
Worst Drawdown 50.9 29.5 45.7 40.3 34.6
Annualized Sharpe Ratio (Rf=0%) 0.739 1.04 0.797 0.83 0.869
Sortino Ratio (MAR = 0%) 0.339 0.498 0.399 0.412 0.43

直近30年では金利の影響を含めてもLPFはS&P500を圧倒しました。ドローダウンもS&P500に比べても少なく、非常に効率的なポートフォリオであるといえます。

今後の対策

しかしこの30年が良かったからといってその流れが今後も続くとは限りません。

 

今は利上げに直面していますし、CAPE派からは今後10年ほどの米国株のリターンは2%ほどまで下がるという懸念もでているため、レバレッジドPFについては最悪の市況と言えるかもしれません。実際に2018年2月のドローダウンは本当の不況と比べると微々たるものですが株式よりもだいぶオーバーに反応しています。

 

個人投資家が取りやすい対策としては、

・もはやS&P500一本で行く
・米国株の中でも投資対象を絞る
・米国外の割安な国に投資する
・アセットクラスを広範に割り振る

などが考えられます。割安な国といえば新興国やアメリカ外の先進国はCAPEベースでアメリカよりは安いですが、今はまだ値下がっていて投資するには不安な面もあります。安いうちに買っておいて長期に持っておく、というのも良いかもしれません。

 

一方、S&P500企業でもハイテク株を始めとしてまだまだ元気な企業は多く、この数年のEPSの上昇のおかげで予測PERは17-8程度とそこまで割高でもないのでアメリカは投資対象から外すには惜しい気もします。

 

ただ、私はレバレッジ芸人らしく、レバレッジという手段でリターンを得て、現代ポートフォリオ理論を駆使してリスクの激流を乗り切る手段を考えたいと思います。そう、コモディティと金です。ちょくちょくこちらでも紹介したオールウェザー戦略を使ったレバレッジPFを次回は見てみます。

※レバレッジ芸人はレバレッジを芸としているだけで別にレバレッジ投資を推奨しているわけではありません。投資は自己責任で。

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