魔法の世紀 落合陽一

 

魔法の世紀

魔法の世紀

 

 20世紀は映像の世紀だった。コンピュータが登場して、新しい体験が生まれるようになった。コンピュータまだ進化する。21世紀のコンピュータは従来のコンピュータよりももっと具現化する能力を身につけるだろう。コンピュータが物質の存在自体をコントロールできるようになるかもしれない。リアルの世界とネット・コンピュータの世界がつながっていく。表現の媒介は紙の発明から19世紀の映像の発明、21世紀には可搬性がさらに向上したスマートフォンが登場など、進化を遂げている。ものが簡単に複製される世界では表現の技工(ルネッサンス期に流行ったようなもの)から、表現の手段により新たな価値が見出され始めている。メディアアートもその一つ。今後コンピュータ科学が発展していくことで知能・物質・空間・時間を含むこの世のありとあらゆる現象が相互作用を生み出すことが出来るかもしれない。

 
著者はデータサイエンティストであり、メディアアーティスト。自分と同世代でありながら、非常に優れて発信力を持っている方だと思います。
プログラミングを通じて機能を具体化する作業と、抽象的なアイディアを現実のモノとして具体化する作業は”つくり上げる”という点に共通点があります。コンピュータサイエンスとアーティストという二面はそう遠いものでは無いのかもしれません。これらの表現手段の可能性をどこまでも突き詰めた先に一つの示唆を与えてくれます。
 
Steve Jobsが初期のMackintoshで目指したのは家電のようなコンピュータであったと言います。(映画: 「Steve Jobs」より)新しい技術もそれがより人々に共鳴し、受け入れられる事で真に光り輝きます。本の中では、ディズニーの例が出てきます。ディズニーは魔法のような世界を描くことに成功したが、今後の真の目的は魔法を世の中に具現化することであると言います。筆者が作成したメディアアートはキャンバスや彫刻とは違った形で現実の世界に”魔法のような形で”物事を表現するものが目立つと思いました。空間にプラズマを通じて映像を投影する技術などは特に印象的でした。コンピュータサイエンスの世界が今後世界に及ぼしていく影響と発展性は現時点でもまだ計り知れません。スマートフォンは確実に世界を変えています。20年前、自分が小さかった頃には考えもしなかった技術がさまざまなアプリを通じて現在の世界では実現されており、一般的なものになっています。現段階ではアートでしか無い表現の手段もこの先、より一般的なものになっていくかもしれません。2Dしかなかったゲームも現在は現実の世界により近づいた3Dの表現が当たり前になっています。しかしその3Dも画面に擬似的に表現された3Dでしかありません。究極的には体験が空間に投影されていくようなゲーム、更にはゲーム自体が体験になる、つまり、オンラインゲームみたいなものがもっと進化して、マトリックスのようなVRとして自分の脳に直接知覚されるようなものだって絵空事では無いのかもしれません。
 
全体を通して、少し専門用語が多く、言い回しもわかりにくいところが多く目立ちましたが学者然とした筆者の頭の中を垣間見るようでした。今後の世界の変化、表現手段の発展について大きく期待を持っている事がよく伝わってきます。
 

 

 

 

ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1

ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1

 

 

 

スティーブ・ジョブズ II

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マトリックス (字幕版)

 

 

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