第1章◆ヒトラーと断固として交渉せず
第2章◆もしチャーチルがいなかったら
第3章◆裏切り者のいかさま師
第4章◆毒父、ランドルフ
第5章◆命知らずの恥知らず
第6章◆ノーベル文学賞を受賞した文才
第7章◆演説の名手は一日にして成らず
第8章◆尊大にして寛大
第9章◆妻クレメンティーン
第10章◆代表的英国人
第11章◆時代を先取りした政治家
第12章◆報復にはノー、毒ガスにはイエス
第13章◆戦車の発明者
第14章◆超人的エネルギー
第15章◆「歴史的失敗」のリスト
第16章◆同盟国フランスの艦隊を撃沈
第17章◆アメリカを口説き落とす
第18章◆縮みゆく大英帝国の巨人
第19章◆鉄のカーテン
第20章◆ヨーロッパ合衆国構想
第21章◆「中東問題」の起源
第22章◆一〇〇万ドルの絵
第23章◆チャーチル・ファクター
第二次世界大戦時のイギリス首相、ウィンストン・チャーチル
1940年、ナチスがヨーロッパ全土の制覇を狙い破竹の勢いでヨーロッパの国々を破っていた中、チャーチルは首相として任命された。チャーチルは断固としてナチスドイツと戦うことを決意し、議会、そして国民に呼びかけた。チャーチルの演説は非常に上手く書かれていた。別の言い方をすれば、チャーチルの演説はその愛国心から、熱意からその場で紡ぎ出されたようなものではない。用意周到に予め言葉を選び作られたものが人々の前で発言されていた。1900年から議会で活躍をする中で、様々な失敗はあったものの、首相になるまでに数々の政府のポストに任命され、職務を全うしてきた。必ずしもその評判が高かったわけではないものの、それまでの間に数々の戦争で実際に現地に赴いたりして戦ったことがある首相として、チャーチルは戦時の首相には非常にフィットしていた。強い愛国心で戦争の時代のイギリスを率いた。
政治家以外にも多彩な人物
政治家としてのチャーチルが日本で最も有名な姿だと思われる。山高帽をかぶり、葉巻を口にくわえ、人々に手を振った姿が私にとっても一番印象的だ。しかしチャーチルの才能はそれのみにはとどまっていなかった。もともとイギリス史において戦争で活躍したという先祖を持ち、貴族の家庭に生まれたチャーチルであったが、必ずしも幸せな家庭に生まれたとは言えない。親との会話などもほとんどなかった。父親は政治家として活躍していた。若き日のチャーチルが多忙な父親に認められたことはほとんどなかったという。政治家として大成していく前のチャーチルのキャリアはジャーナリストであった。戦地に実際に赴いて書いた記事を寄稿していた。記事の質は高く、売れっ子のジャーナリストとして大きな額を稼いでいた。政治家になっても物書きは続けていた。といっても書くスタイルは非常に贅沢なもので口述を秘書に書きとらせるといったことを毎晩毎晩行なっていた。生涯でチャーチルが著した書籍は31冊にも及ぶという。それにくわえて様々な記事や議会の演説、財務相の時には膨大な予算案の作成など、チャーチルのエネルギーはとどまることを知らなかった。文学の方面では何とノーベル文学賞までも受賞している。また、チャーチルは絵画も趣味として、生涯で数百もの絵画を残している。
著者、ボリス・ジョンソンの意図
チャーチルの伝記として、非常に細かい取材を繰り返して書いた本であることがうかがわれる。ボリスジョンソンはチャーチルが大好きなのか、各章の記述においてチャーチルを擁護するような記述がよく目立つ。イギリスの近年の政治、というかヨーロッパの近年の政治でも特徴的ではあるがナショナリズムの台頭の雰囲気を本書からはどうしても感じてしまう。それはボリス・ジョンソンがジャーナリストであると同時に政治家であることに起因していると思われるが、様々な事例の解釈が非常にイギリスよりである。というかイギリス人がイギリス人の英雄を称えるために書いた本なので当たり前なのかもしれないが、解釈に政治的な意図をどうしても感じてしまう。強いイギリス、大英帝国のリーダーであったイギリス、英国人としてのアイデンティティ、イギリス人が生み出した様々な発明のことなどが讃えられる。さらに本書で度々触れられる同性愛者や女性参政権についての話であったり、後半には共産主義について、EUについて、そのなかでイギリスがどういった立場をとっていくかについてはどうしても著者の意見が透けて見えてしまうものなのだろう。ナショナリスティックな意見を客観的に受け止めるつもりで本書を読むと、批判的な意見も肯定的な意見も第三者的な解釈ができるようになり、イギリス人からみたチャーチル像が浮かんでくる。
・地政学について知る上で現代の中国の事を知ることは日本人にとっては特に重要です。
・食をめぐる現代のさまざまな問題
・10万年という長い歴史の人類を俯瞰する本。
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