債券の価格の変動幅って?
債券の価格は利回りによって変動するといったことは有名です。ただ、利回りが1%増えると自分が持っている債券ファンドの価格はどの程度変動するかをちゃんと考えたことが無い方も多いと思います。変動幅をちゃんと知ってリスクを知ることは大事です。
今回の記事では債券の値動きを見積もる方法を紹介します。
具体例から考える
30歳のときに2年債Aを発行価格 10000円で買った。その債券の表面利率3%で、2年に渡り毎年3万円の金利収入が得られた後、10000円で買い取ってもらえる(償還)ものです。翌年にはその債券は残債期間が1年となります。この時点で新たに発行された1年債B(発行価格10000円)の表面利率が4%だった場合、自分が持っている債券Aはいくらで売れるか?
という風にしましょうか。
債券はfixed incomeと言われるように、(ちゃんと償還されるならば)毎年固定のリターン(クーポン)が得られるものです。アメリカのように格付けが高い国であればほぼ確実にクーポンが得られます。
上の債券Aであれば、10000 × 3 ÷ 100 = 300円が毎年クーポンとして入るはずです。その2年間のトータルのリターンは600円になるはずです。
注意点としては、トルコの債券の利回りが20%とかになったりしてますが、あれは発行された債券が実際に償還されるかわからなかったり、インフレの影響で金利分の支払いは同じでも価値が下がる可能性などが織り込まれているので、利回りが高い債券(ジャンク債)に投資するとそれだけで毎年高いリターンが確実に得られる、とは思わないほうが良いです。このようなリスクの話はややこしくなるので今回は無視するとします。
単純に考えてみる
さて、31歳の時には債券Aを既に1年保有していて300円のリターンを得ているはずです。債券Aは残債期間1年でさらに300円の金利収入を生み出して1年後には10000円で償還されます。見込みのリターンは300円です。
ただ、同じ残債期間1年なら債券Bの方が魅力的ですよね。債券Bは年400円の金利収入を生み出して1年後に10000円で償還されるので見込みのリターンは400円です。
ある時点で同じ償還期限の債券を比べた場合、金利により期待リターンに明らかな差が出ます。もし債券A(期待リターン300円)も債券B(期待リターン400円)も同じ価格(10000円)で買えるのであれば、新たに債券を買いたい人は債券Bを選びます。というか、同じ価格で売れるなら債券Aを持ってる人は全員債券Aを売って債券Bを買うはずです。このようなことが起こるのですが、実際には誰も債券Aを買いたい人はいなくなってしまうので債券Aは値下げをしなくては売れません。
例えば、この時点で買う債券Aの価格と償還価格、金利収入を考えてみます。
10000円で買った場合、金利収入 300円、償還価格 10000円
・・・期待リターンは、(300 + 10000) – 10000 = 300円
9900円で買った場合、金利収入 300円、償還価格 10000円
・・・期待リターンは、(300 + 10000) – 9900 = 400円
9800円で買った場合、金利収入 300円、償還価格 10000円
・・・期待リターンは、(300 + 10000) – 9800 = 500円
つまり、9900円以下で債券Aが買えれば債券Bよりもリターンが高くなります。このため、債券Aが取引される価格が9900円くらいに落ち着くはずです。1%の表面利率の上昇が債券価格を1%下げたことがわかります。
このように考えると、金利が上昇した時は債券の価格が下落する、ということがわかりやすいのでは無いでしょうか。逆に、金利が低下したときは債券の価格は上昇します。
債券の残債期間が長いほど、その後にもらえる金利収入が多いため、金利の変動に対して債券価格は大きく動きます。同じ問題で残債期間が10年だった場合、表面利率3%→4%の変化で債券Aは1000円くらい値下がりするはずです。
原則としては、利率の変化が大きければ大きいほど債券価格の変化は大きく、残債期間がながければ長いほど債券価格の変化は大きくなります。
とりあえず簡単にして、以下のように理解しても良いと思います
債券価格の変化 = 利率の変化 * 残債期間
とりあえずはこの程度のことがわかっていると十分かとは思います。
ファイナンス理論的に厳密な債券価格の式
実際には計算はもう少し複雑になるようです。ところで、ここまでの議論では債券自体の表面利率の話だけで考えましたが、実際には債券価格の決定で使われている「利回り」で考えます。
「表面利率」と「債券利回り」の違いは説明できますか?
表面利率は債券自体の利率(10000円の債券が毎年クーポン300円を生む、みたいな計算に使うやつ)に使われますが、投資家が要求する収益率が債券利回りです。投資なので債券利回りは複利の利回りとして計算するものです。
なので、「利回り4%の時の、表面利率3%、償還期限2年の、額面金額10000円の債券価格」を計算しようと思うと実はもっとややこしい計算になります。
価格 = 300 / (1.04) + 300 / (1.04)^2 + 10000 / (1.04)^2
= 9811 円
= 9811 円
です。ややこしいですね。将来得られる価値を現在の価値に換算するには利回りによって割り引かなくてはならないので、こんな計算をします。1年後もらえる300円から4%を差し引いた価値、2年後の300円から4%を2回差し引いた価値、2年後償還される10000円から4%を2回差し引いた価値、といった具合です。
高校生の数学的に言えば等比数列の和と償還される額面の現在価値の和ですね。真面目に計算すると、以下のような式で求まりますが、かなり複雑です。
C = クーポン価格
i = 利回り
M = 償還価格
n = 支払い回数
i = 利回り
M = 償還価格
n = 支払い回数
ここの理論はinvestopediaなどを参照してます。
価格シミュレーションを提供しているサイトも結構多いですね。
実際に計算してみた印象
ところで、債券インデックスを再現するために上の式をエクセルに打ち込んでシミュレーションをしてみましたが、ETFや債券ファンドのインデックスを再現する精度としては最初の簡単な式と大して変わりませんでした。
だいたい、
債券価格の変化 = 利率の変化 * 残債期間
これは目安として使いやすそうな式ですね。
※実際には上の式よりも少なめの変動を示します。
※債券ETFでは残債期間が様々な債券の寄せ集めなので動きが公式だけでは求まりませんが、平均の残債期間を使うとなんとなく似たような値動きになります。
コメント